第18話

「えっと、エミエラ?」


「はい?」


「なんで王城に呼ばれたの? 俺首飛んじゃうの?」


「ふふっ大丈夫ですよ、あの後、王城でセシリア様のご両親とお話してきたんです」


「そ、そうなんだ」


 え? ご両親って国王様と王妃様ですよね?

 え、俺の婚約者単身で王城に乗り込んだの?

 確かに帰りが遅いとは思ったけど王城に乗り込んでるとは……

しかもこの流れすっごいデジャブを感じるんだけど……


「マジか」


「カイル様、公の場ではありませんがそろそろ」


「そうだったな、行こうか」


 今日は何故か! 国王様と王妃様がわざわざお時間を作ってくださって俺たちと話したいそうだ。

 あぁ、12歳になってからいろいろと起きすぎじゃないか?

 俺はエミエラと幸せに暮らせれば満足なんだけど……


「「失礼します」」


「よく来たな」


「ささ座ってくださいね、今日は突然呼び出してごめんなさいね〜」


「「えっと」」


「サイラ? も、もう少し王としての威厳をだな」


「娘が迷惑をかけておいて父として威厳もないでしょうに」


「ぬっ!?」


「威厳など気にしなくていいように人払いをしてこの場を用意した私の苦労を知っていながら言うのですか?」


「す、すまない」


 この世界の旦那ポジションってもしかして不遇?

 奥さんが強すぎるだけか。

 エミエラのお義父さんといい、国王様といいなんで奥さんの尻に敷かれている男が多いんだこの国は……


「んん、見苦しいものを見せたな、本題に移ろうか」


「「……」」


「我が娘、セシリアはな……双子で産まれるはずだった」


 この世界でも産まれる前に双子かどうかが分かるのか。

 それにだったということは何かがあったのだろう。


「しかし、結果産まれたのはセシリア1人だった、占い師による占いも100パーセントでは無いので最初は珍しいこともある物だと思っておった」


「ある日の夜、セシリアが私達の寝室に訪れた、普段は夜に出歩かず部屋から滅多に出ない大人しい子だったので驚いて話を聞いたのだ」


「長ったらしいですわ、私たちはそこでセシリアのもう1つの人格……いや、双子の姉であるルーシアに出会ったのです」


 ルーシアというのは昨日俺の事を襲ってきた人格の方か。

 その後も王妃様が淡々と出来事を語ってくれて何となくこれまでの経緯を理解することが出来た。

 ひとつの身体に2人の人格が宿っており、普段はセシリア様が動いている。

 しかし、セシリア様に危機が迫った時にはルーシアが出てくるそうだ。


「このことを周知しない事を誓ってもらうためにここに呼び寄せたのですわ」


「誓います」


「ふふ、そう言ってくださると思っていましたよ、ではここからはお願いなのですが1度娘とエミエラちゃんと3人で話してくださらない?」


 ここからはってセシリア様の件は強制なのね。

 断ってたらどうなってたのやら……


「カイル様」


「分かりました、では後じ」


「まあ! ふふ、セシリアの寝室へはエミエラちゃんが案内してくれるわ!」


「今日はもう遅いですし後日に」


「まあ! ふふ、エミエラちゃんが案内してくれるわ!」


 押しが強い……有無を言わせぬ圧を感じる。

 エミエラもにっこり笑顔で助け舟は出してくれ無さそうだ。


「謹んでお受け致します……」


「はいっ! ではエミエラちゃん後はよろしくね!」


「はい! サイラ様、後はお任せ下さい」


「「失礼いたします」」


「御苦労だった」


 あ、国王様いたんだ。

 途中から空気だったから忘れてた……ごめんね?


「それじゃあ行きましょうかカイル様」


「うん……」


 諦めって肝心だと最近になって気付かされた。

 エミエラ相手に抵抗は無駄なのだ。

 散歩させられている犬の気分で王城の通路を進んでいく。

 そしてついに、豪華な扉の前でエミエラが足を止める。


「セシリア様、いらっしゃいますか?」


 バンっ!


「エミエラ!…………とカイル、いらっしゃい」


「随分と露骨な差だな」


「……いや、その……ごめんなさい、私の力不足であなたを襲ってしまったわ」


 どうやら俺を見て固まったのはどうやって謝るかを考えていたかららしい。

 随分と塩らしくなっていてどうやら本気で反省しているらしい。


「謝るのはセシリア様じゃないでしょう?」


「でも、私が少しでも殺したいと思ってしまったのが原因だし」


「こういう時にセシリア様を盾にするのか? ルーシアちゃん?」


「「あんた殺されたいみたいね」ちょっと!」


「出てきたな、言うことがあるんじゃないか?」


「「悪かったわね」」


「うん、許そう……用事終わったし帰っていい?」


「「は?」え?」


 え、まだ何か話す事あるか?

 謝ったしそれでいいじゃん俺は怪我してないしこれ以上この件をこねくり回しても得られるものはない。


「その、命を狙われて謝罪だけでいいのですか?」


「怪我したわけじゃないし別にお金も欲しくないし」


「「無欲な馬鹿ね」こ、こら! せっかく許してくれたのに……」


「んじゃ、そういうことでまた明日学校でな」


「えっと、また明日……「ふん」」


 いい感じで話が纏まったしこのまま帰ろう。

 王城は落ち着かないのだ、ましてや王女様の部屋なんて生きた心地がしない。


「カイル様、私はこのまま王女様のお部屋に泊まることになっていますので」


「分かった俺は先に帰ってるよ、おやすみ」


「えぇおやすみなさい、カイル様」


 帰りの道はセシリア様の侍女が案内してくれて無事に馬車に到達。

 明日からはついに学園生活が始まる。

 どうか少しくらいは『女難の相』が大人しくしてくれることを願いながらエミエラの居ない少し寂しい屋敷で夜を過ごすことになった。



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

明日から1週間2日に1回投稿になるっす……

テスト勉なんてクソくらえ!(´;ω;`)

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