Loop

きよちゃん

第1話 2人は冷たい螺旋の中で

「」→坂ノ上望(のぞみ)

『』→一ノ瀬享(とおる)


私たちは囚われている。無限に繰り返される愛と別れの螺旋に…


これで何回目だろうか…

1人の女性が呟く。

彼女の名は坂ノ上望。

高校1年生のはずだ…

彼女は何度も同じ時を生きている。いわゆる無限ループだ。

そのため普通に過ごすことができていたら、2年生に進級している頃だろう。

その予想も時間が意味を持たないこの世界では、憶測に過ぎない。

彼女は何度もある人に想いを寄せてしてしまう。

その子の名前は、一ノ瀬 享(とおる)

優しく、人懐っこい性格の子だ。

そんな彼に望は何度も恋をしてしまう。

「私はいったい何度彼を愛したら救われるの?いや、救われるなんてあり得ないのかもしれない。だって私は…」


時は遡り5ヶ月前、正確には5ヶ月くらい前のループの時だ。

その時点でループをかなりの数していた望は彼に出会うことを嫌うようになっていた。何度彼と距離が縮まろうと、彼と彼女の関係に大きく変化が訪れるとまた彼に出会う前に戻ってしまう。

「いっそのこと、彼を出会う前に殺してしまったほうが…」

そんな恐ろしいことを思いつくほど、望の心は蝕まれていた。

そのまた2ヶ月後、望は逆に自分を殺そうと考えた。出会う前に自分が居なければ、2人の関係に変化は訪れない。そう考えて、望は橋の上から飛び降りようとした。

結果は出来なかった…

自分を殺せなかった。心のどこかに彼に会いたい、彼と話したいという気持ちがあった。

それに橋の上から飛び降りようとした

その時、彼がいた…

なぜそこにいたのか理由は分からない。

気づいたら、望は彼に抱えられて助けられていた。

(どうして君はいつも私を…)


時は戻り、現在

「やっぱり私は救われないのかな?まぁ人の命を奪うことを考えていたぐらいだもんね、罰せられてもおかしくないよね…」

そんなことを考えると自然と涙が出てくる。

「こんなっ!こんなことになるなら感情なんて要らない!人なんか愛すんじゃなかった…」

望の冷たく悲壮感に満ちた声が薄暗い

彼女の部屋に響いていた…


何度同じ所を通っただろうか。望は学校へ向かう途中だった。そこで彼に会った。

いつもと同じように屈託のない笑顔でこちらに近づいてくる。

『今日はなんだか元気なさそうですね?望さん。』

このループだと私たちは出会ってからあまり日が経っていない。だから彼は私にさんと敬称をつけてくる。

「私を呼ぶ時にさんは必要ない。望だけでいい。」

そんな言葉に、彼は笑みをこぼす。

「はい!望さ…じゃなくて望!」

望はできる限り、享のことを好きにならないようにあえてそっけない態度をするようにしていた。だが彼の声を聞くとまた言ってしまう。

「享の声って落ち着く…」

それを聞いた享は少し恥ずかしそうだが嬉しそうな様子だった。

信号が青になり、享は歩いていく。望はその先に進みたくなかった。

君を愛し、また最初からやり直すなんてしたくなかった。

だが彼が言う。

『何してるんですか、望?早く行きましょうよ〜』

その優しくて、温かい声には抗えなかった。

そうして2人はまた冷たい螺旋の中に落ちていく…

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Loop きよちゃん @yoyotake

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