異世界帰りの俺、TS魔法少女になっても筋肉で全てぶん殴る
☆ほしい
第1話
――魔王を、ぶっ飛ばした。
俺――いや、今は「私」か――神楽カイは、異世界〈エルデ=ガルド〉で数えきれない修羅場を乗り越え、ついに
「これで……終わった、か!」
ボロボロの服、血だらけの拳、地に膝をついた俺の前に、すべてを見守っていた聖女様が涙ぐみながら微笑んだ。
「カイ様……本当に、ありがとうございました……!」
「へへっ……当然だろ……?」
ふらりと立ち上がり、天を仰いだ俺の視界に、輝く光が満ちる。
聖女様が祈りを捧げると、世界中に流れていた瘴気が一斉に晴れ渡り、町にも村にも、笑顔が戻る。
これでようやく、長かった戦いにも終止符を打てたわけだ。
もう思い残すことはない。
「カイ様。あなたは、約束通り……元の世界へ帰還できます」
聖女様がそう告げたとき、俺は胸を張って答えた。
「おう! 帰ったら……ステーキ食って、風呂入って、ぐっすり寝るぞー!!」
ガハハと笑った瞬間、眩い光が俺を包み込む。
そして――
*
――目が覚めたら、そこは見慣れた……ようで、どこか違う現代世界だった。
「ん、ここ……どこだ?」
起き上がって、周囲を見渡す。ビル群が並ぶ都会、だけど路地裏に魔法の紋章が刻まれていたり、空に浮かぶ巨大なリング状の構造物があったりと、異世界ファンタジーめいた装飾がそこかしこに混ざっている。
「ふーん……まあ、細けぇことはいいか!」
異世界帰りにちょっとくらいファンタジー混じってたって、驚くほどでもない。
問題は、俺のこの身体だ。
「……うわ、うっす! 筋肉どこいった!?」
今の俺の身体は、どこからどう見ても華奢な美少女だった。しかも、ふにふに。ぷにぷに。
前に鍛え上げた鋼のような筋肉はどこにも見当たらない。
いや、正確には――完全に消えたわけじゃなかった。
「むむむ……力を込めると、ちゃんと動くな」
ちょっと拳を握っただけで、バチバチと音を立てて体内エネルギーがみなぎる感じがする。
筋肉は見えないだけで、存在そのものは異世界仕様だ。つまり――
「見た目美少女、中身ゴリマッチョ!! 最高じゃねぇか!!」
腕をぶんぶん振り回しながら笑ってると、通りすがりのOLさんたちが「きゃっ」と逃げていった。
「……まあ、外では少し大人しくしてた方がいいか」
自分でもわかるくらい挙動不審だったからな。仕方ない。
さて、現代っぽいけど現代じゃないこの街で、どうやって生きていこうか。
……と思ったら、突然、目の前に、赤と白の水玉模様の傘みたいな生き物がぽよーんと降ってきた。
「うわっ!? な、なんだお前!?」
「カイ様!! 私、ミルフィ! あなた専属のサポート妖精です!!」
「え、専属? 妖精? サポート?」
「はいっ! あなたにはこれから、この世界を守る使命が課せられていますっ!」
「ほう……なるほど?」
異世界帰りに現代異世界で魔法少女とか、もはや笑うしかない展開だな!
「任せろ!! この俺、いや、私、神楽カイ! 異世界仕込みの魂と拳で、この世界だろうがどこだろうが、全部まとめて守ってやるぜッ!!!」
拳を天に突き上げると、ミルフィがぽよぽよ跳ねながら拍手してきた。
「さっすがですぅー! それじゃあ、まずは変身しましょう!」
「変身?」
「はいっ! これが変身アイテム、『ソウルブレスレット』です!」
ミルフィが取り出したのは、ゴツめの金属製のブレスレット。
なんかこう、魔法少女ってもっと可愛いアイテム使うイメージだったけど……まあいいか!
ブレスレットを受け取って、腕にはめる。
すると――
「『マッスル・フレア・チェンジ!!』って叫んでください!!」
「よっしゃあ! 『マッスル・フレア・チェンジッ!!』」
ドゴォォォンッ!!
爆発的な光が俺を包み、次の瞬間、派手なフリルとリボンがついた、でもどこか戦闘服っぽいデザインの衣装に包まれていた。
「うおおおおっ!? 派手ッ!? でも……動きやすい!!」
変身後の身体は、異世界仕様の気配がさらに強まってる。
これなら、どんな敵が来ようがぶん殴れる気しかしねぇ!
「カイ様っ! 初任務ですっ!! 近くのショッピングモールに、アベレーター(怪物)が出現しましたっ!」
「了解!! 目標、ぶっ倒して、ショッピングモールを守る!!」
よーし、燃えてきたあああ!!
異世界帰りの筋肉魂、この世界でも全開だッ!!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます