たまたま、今まで残ってきた。
そういうことも、もしかしたらあるのかもしれない。
飛べない鳥カカポのように、その存在が知られてしまったことで絶滅寸前まで追いやられてしまった生き物もいる。それまでは、奇跡のようなバランスで命をつないできた。
翻って、この物語の引き継がれてきたものは……その意味を問うのも難しい。
だが、小説や彫刻、絵画……あるいは工芸品のように、保存状態が良ければ残り続ける、というものでもない。
もしかしたら、伝統舞踊、あるいは武術、言語化できない、或いは楽譜に起こせない音楽のようなものかもしれない。
人の内にあって初めてその存在が保たれる……
彼女の抱き続けてきたものが、今後も受け継がれていくことを、私は願った。