透明ノイズ

但野 樋斗

第1話 誰の目にも映らないまま、見られていた。

スマホが震える。

きっと、SNSの通知だろう。

授業中のスマホは禁止されてるが、すこし心が惹かれて先生の目を盗んで画面を光らせた。


”user0206 さんが いいね!しました” 


先ほど投稿したイラストだろうか。はたまた自撮りだろうか。

通知を軽くタップすると、表示されたのはイラストだった。

一次創作のキャラクターで、私の好きを詰め込んだキャラクターが描かれたもの。

好きだけじゃなく、私の感情を表現してくれる代理人のようなキャラクターだ。


私のイラストにつくのはいいね!のみ。

誰もコメントや引用をしてくれない。

私の思いは、伝わらないんだ。


ズキン


「おい、ミオ。今授業中だぞ。」


先生がこちらを見て、大声で注意をした。

瞬間、クラス全員の顔が、目がこちらへ向いた。


ズキン


「また、あの子注意されてる。」

「なんで直さないんだろう。」


わかってる。依存しているのは。

でも、このクラスのみんな話したって、見せたってわかってくれない。

わかろうとしてくれない。

結局、私はSNSを通して何がしたいの?

伝わらないんだったら、どうせやっても_


ズキン


心臓がいたくなる。

心臓が今にも爆発しそうな勢いではねる。音が聞こえる。

先生の顔が歪んで、混じって。

音が聞こえない。


貧血だ。


そう思った時には、私は意識を手放していた。

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