第2話「なんで急に意味わからんテロなんて起きるんだよ。」

〜新谷高校付属寮〜


「しばらく休みだってさー」


「やったあ」


「呑気だなあ」


 あの放送以来、特に動きがないらしく、世間は落ち着きを取り戻しつつあった。


「まじでさ、なんで急に意味わからんテロなんて起きるんだよ」


「こっちに言われたってねえ」


「お前何かしらやりかねない性格しとるやん」


「すぐそんなことを言うなんて、クズかよ」


「クズはお前だ」


 すると、寮内のテレビが急に砂嵐を映し出した。


「これはまさか……」


 2人は察した。


「皆、こんばんは。今日はとあることを話したいと思う。私は来たる日のための準備を済ませた、穢れた世界をこのボタンで全て消し去る、簡単に言えば、日本全てを爆破させて、浄化させるのだ」


「何馬鹿げたこと言っとるんだこいつ」


「いやいや、何をそんな呑気に言ってるの!?普通に日本の危機じゃんどう考えても」


「どうでもいい、爆破でもなんでもとっととしやがれ」


「お前の思考どうなっとるねん」


「え、上手く他の人を利用して楽しく生きる、危機が来たらどうにでもなればええって思ってる」


「それを世間ではクズって言うんですよこのゴミクズが」


「というわけで日本滅びるんでお金貸してくださーい」


「その質問にはこれから必ずこう答えるようにします、絶対に無理」


「彼氏と彼女の関係じゃないか、10万くらいすんなり貸せる仲じゃないと」


「お前の基準おかしいって、あと一度も金もその他物品も返してくれた試しがないんだが?」


「日本滅びたら返すわ」


「その前にお前を殺って全て奪い返してもいいんだぞ」


「怖いなあ」


「あ、やば、つい話しすぎて放送見てなかった」


 そう思いまた放送を見たがすでに何も表示されてなかった。


「終わっちゃったかー」


「どうせどこかの動画配信アプリであの放送の無断転載動画がすぐ出てくるだろ」


「やけに詳しいね……無断転載動画よく見てるの???」


「見てる側が罪に問われることなんてほとんど無いからええやん」


「あのねぇ……まあさすがに今回の放送は別だから見逃したところないか一応見てみるけど」


「てかなんでそんなに内容気になってるんだ?見たってどうせどうにもならないだろ」


「いやあ、この一連の件でなんかがひっかかってねぇ、気のせいだったらそれでいいけどとりあえず見ておこうと思って」


「ふーん、そういう時ってだいたい何も無いと思うけどな」


「私もそう思いたいけど……やっぱりなにか気になるんだよね……」


「とりあえず俺そろそろ寝るわ」


「私は放送の動画見てから明日の用意して寝る」


「しばらく休みなのに?」


「一応家庭学習って言ってたじゃん」


「真面目すぎるなあ、そういう時は適当にずっと遊んでおけばいいんだよ」


「そんなことしてたら成績落ちるだろ、お前そういえば成績どんなんだっけ、何気にほとんど見てなかったけど」


「ここにあるから勝手に見れば」


 そう言って小さな引き出しの中にあった成績表を取り出した。


「えっ……内申点41……?」


 頭はめちゃくちゃ良かったようだ。


「お前めちゃくちゃ頭いいじゃん!あとさ、なんで理科だけ成績1なの???」


「理科の先生は唯一俺がクズだと知ってるからな」


「あー、理解」


「理科だけに?」


「ちがうわ、てかはよ寝ろよ」


「へーい」


「私もやる事やったら早く寝よっと」


〜ゲレヒティヒカイターの部屋〜


「さてと、来たる日のための準備は済んだ……ん?」


 パソコンになにかメッセージが来た。


『政府からの警告。例の2回にわたる放送からあなたの使用している端末を逆探知した。今すぐ今しているテロ行為をやめ、自主しなさい。従わない場合はいかなる武力行使も厭わないとする』


「くっ……仕方ない、あれを使うとするか……」


〜新谷高校付属寮〜


 夜中の寮内に砂嵐の音が響く。


「なによ、こんな夜中に……って、また放送?」


「ん、どした?」


「あ、優乃が起きるなんて珍しい、普段は爆発音でも起きないくせに」


「今日はソシャゲのイベ日だもん、そのためにお前に色々借りたんだし」


「借りたんなら返せよ」


「借りるって貰うと同じ意味でしょ」


「とりあえずお前は常識学び直せ」


「嫌だ」


「おい。てかさ、そういえばなんのゲームやってるの?」


「え、なんかガチャでキャラ集めてただひたすらゾンビを倒すゲーム」


「なにそれ、面白いの……?」


「あんまり、てかまた放送始まったぞ」


 するとまたロゴが出てきて、音声が聞こえた。


「先程、政府から警告が来た、だが、私はこの計画を止めるつもりは無い。政府が武力行使を視野に入れてるのならば私も最大限の抵抗をする。」


 すると謎の部屋の画面が映し出された。

 そこには、銃を持った人のような形をした機械があった。


「これは……うっ……」


 急に野上が頭を抱えうずくまった。


「おい、野上大丈夫か!?」


「だ、大丈夫……」


「とりあえず薬買ってくる」


「あ、ありがとう」


 するとまた音声が聞こえてきた。


「これは私の作った最新兵器だ。いかなる武力攻撃も無効となる兵器。それでも抵抗するなら勝手にすれば良い、では、また次の放送で」


 また放送が途切れた。


「おい、頭痛薬買ってきたぞ」


「あ、ありがとう」


「これで借りた分はチャラだな」


「そんなわけねえだろバカ」


「突っ込む元気はあるみたいだな」


「確かにそうだな」


 微笑みながらそう言った。

 だが、危機が明らかに迫って来ていることがより明確になってきた。


「にしても、あの兵器がもし本当に使われるとしたら……」


「なんか楽しそうだから別にいいじゃん」


「お前さぁ……」


 いつまでも変わらない優乃のペースにいつものように振り回される野上だった。

 その頃政府側は。


〜日本政府緊急テロ対策室〜


「この一連のテロ行為は、過去に一度爆破テロ未遂を起こした個人の宗教団体及びテロ組織、ゲレヒティヒカイター、ドイツ語のゲレティヒカイト、日本語で正義を元にして名付けられた自称正義の使者としている組織の犯行とみられます」


 そう言ったのは、過去に爆破テロ未遂があった時に担当していた刑事の1人、野上正人だ。

 野上真紀の父親でもあり、その過去にあった爆破テロ未遂の出来事をとあることで少し悔やんでいる。


「わかった、では、今回の件も君に担当して貰えるか?」


「もちろんです、過去のテロ未遂の経験を元に必ず犯人を確保してみせます」


「頼んだ」


「そこでなのですが、いつ相手が動くか分からないのでその動きに即座に対抗できるような対策を講じたいのでそのための資金提供をお願いしたい次第です」


「それならいくらでも構わんよ、政府としては全面的に協力する」


「ありがとうございます」


「できることならなんでも支援するから、必ずこのテロ行為を阻止してくれ」


 この時は知る由もなかった、ヤツに対抗できるのがあのクズしか居ないことを……

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