第38話

第三のスリットが開いた瞬間、俺は反射的に後方へ跳んだ。


「来るぞ、遠距離型!」


「了解っ!」


音もなく現れたのは、細身のフレームに装備された長大なライフル。右腕そのものが砲身に変形してる。索敵用のセンサーが三つ、常時稼働してるっぽい。狙撃型ってやつだな。


「距離を詰めれば勝てる。でも近づけさせねぇって構造だ」


「遮蔽物、使う!」


カイが即座に《障壁展開・連続》で五枚の壁を設置。その影を使って、俺たちはジグザグに接近していく。


「狙われてるの、私……!」


「ミア、下がれ!」


「《幻影分身》!」


ミアが囮を出す。三体に分かれた幻影のうち、一つが撃ち抜かれて爆ぜた。だが、その間に俺は距離を詰められるだけ詰めてた。


「《加速術式・絶対突進》!」


推進強化で一気に懐へ。奴の砲口が軋みを上げて俺に向くが、もう遅い。


「《切断術式・貫入》!」


突きで内部構造を突き破る。だが反応速度が異常だ。倒れながら左腕でナイフを生成し、反撃に転じてきやがる。


「ちっ……!」


「《狙撃術式・重撃》!」


ミアのカバー射撃がナイフを弾き飛ばす。即座に俺は首元へ切り上げた。


「撃破!」


「今の、早かった……!あんな短時間で反撃って」


「演算核の処理が尋常じゃねぇってことだな。どの機体も単体で戦術級並だ」


「三体倒した。あと二体……来るよ!」


「位置確認、左上!」


天井のパネルが開いた。次の機体は、翼のような構造体を背負っていた。推進力を使った高速戦闘……空中型か!


「空から来るのかよ……!」


「天井空間、広いから厄介!」


「カイ、天井にも障壁展開できるか?」


「試す!《障壁展開・上層網》!」


網目状に天井を覆うような障壁が形成される。敵がそれに接触し、進路がわずかにずれる。


「今だ!」


「《狙撃術式・拡散》!」


ミアが一斉射撃で視界を奪う。俺はその隙に跳躍して、空中で構えた。


「《衝撃刃・双連》!」


翼を断ち、胴体に向けて切り込む。だが機体は空中で姿勢を修正、俺の腹部へ肘打ちを食らわせてきた。


「ぐっ……!」


「おい、下がれ!」


カイが《引き寄せ術式・空間把握》を発動、俺を無理やり後方へ引き戻す。同時に展開された障壁が追撃を弾いた。


「助かった……!」


「次、俺が囮やる!突っ込んで来い!」


「了解!」


カイが全力で突撃、敵の視線を引く。ミアが援護射撃。俺は背後から回り込み、再度空中へ。


「《加速術式・踏破》!」


今度は軌道予測を逆手に取った挙動で、奴の真上を取る。肩部の接合部へ斬撃。バランスを失い、墜落する機体。


「とどめ!」


ミアが狙いを定めて──


「《狙撃術式・収束》!」


一点集中の一撃が敵の演算コアを貫通した。破裂音。内部回路が焼き付き、機体が停止した。


「四体目、撃破完了……!」


「あと一体!」


だが、待てよ。まだスリットは開いてない。ということは……


「最後の一体、どこから来る……?」


「警戒、最大でいこう」


そのときだった。


部屋の中心、演算核が発光し始めた。いや、ちがう。発光じゃない、〈変形〉だ。


「おい、まさか──!」


演算核の球体が開き、内部から現れたのは人型──だが、明らかに他の機体とは異なるオーラを纏っていた。


「……敵識別コード、特級個体認定。制圧対象名:〈レヴナント・ゼロ〉」


「機体番号ついてる!?てことは、こいつが……ラスボスってこと!?」


「たぶん、これが中枢そのものだ。最終防衛機構──演算核の守護者」


「自動で戦う兵器じゃなくて、自我持ってる……目が、生きてる……!」


「正面から潰す。全力でいくぞ」


「了解っ!」


「いくぞ!!」

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