第31話

瓦礫を踏み越え、俺たちは拠点へと急ぐ。


荷物は重いが、足取りは軽かった。


「リクト、これ、すごいよね!」


「……ああ」


ミアがポータブル端末を抱きしめるように持っている。


「これがあれば、ほかの生存者も助けられるかも!」


「生存者がいれば、な」


「絶対いるよ!」


ミアの無邪気な声に、俺は小さく息を吐いた。


「気を抜くな。まだ生き残るための準備もできてねぇ」


「わかってる!」


だが、俺も少しだけ、希望を感じていた。


ビル群を抜け、仮拠点が見えてきたときだった。


「──止まれ」


「え?」


手を振り上げて、ミアを制止した。


《気配探知》に引っかかった。


「リクト、何かいるの?」


「ああ……数、四。人間だ」


「生き残り……?」


「不明。警戒しろ」


「了解!」


ミアがすぐに身を低くする。


俺たちは瓦礫に身を隠し、様子を窺った。


拠点の入口付近に、四人組の男たちがたむろしていた。


武装している。銃火器も、ナイフも持ってる。


「……ならず者か」


「どうする?」


「交渉は無意味だろうな」


「戦う……?」


「やるしかねぇ」


ミアの顔に緊張が走る。


「怖いけど……リクトがいるから、大丈夫!」


「行くぞ」


ミアが小さく頷く。


「作戦は?」


「奇襲だ。俺が正面を引きつける。ミアは背後を取れ」


「了解!」


ナイフを握り締め、ミアが身構える。


「合図は三秒後」


「うん!」


心の中でカウントする。


──三。


──二。


──一。


「今だ!」


俺は瓦礫を蹴って飛び出した。


「何だあっ!?」


ならず者たちが驚き、銃を構える。


だが、その動きは遅い。


俺はライフルを乱射した。


バンッ、バンッ、バンッ!


一人目、胸を撃ち抜き即死。


二人目、肩を撃たれ膝をつく。


「リクト、左!」


ミアの声に反応して左へ回避。


弾丸がすれ違う。


「クソがっ!」


三人目がナイフを振りかぶって突進してきた。


ナイフを弾き、逆に腹部へ蹴りを叩き込む。


「ぐぅっ!」


男が吹き飛ぶ。


「ミア!」


「任せて!」


ミアが背後から四人目に跳びかかる。


小柄な体を活かし、ナイフで手首を切り裂いた。


「ぎゃああっ!」


銃が落ちる。


「終わりだ!」


俺は銃を踏みつけ、抵抗を封じた。


残るは肩を撃たれた男一人。


「た、助け──」


「寝てろ」


俺は躊躇なく殴りつけた。


男が意識を失い、地面に倒れた。


「……クリア」


「やった……!」


ミアが駆け寄る。


「大丈夫!?」


「かすり傷だ」


「よかったぁ……!」


ミアが涙目になりながら笑った。


「荷物、漁るぞ」


「うん!」


ならず者たちから武器、弾薬、食料を回収する。


「リクト、これ……」


ミアが小さなポーチを手にしていた。


「中身は?」


「わかんない。開けていい?」


「ああ」


ミアがファスナーを開ける。


中から出てきたのは──


「これ、地図?」


「……違う。通信コードだ」


「通信コード?」


「旧世界のセキュリティネットワーク用のキーだ」


「すごいの?」


「ああ。これがあれば、まだ使える通信施設に接続できる」


ミアが目を輝かせた。


「リクト、私たち……!」


「ああ。地図も、通信も手に入れた」


「すごい、すごいよ!」


「だが、敵もこれを狙ってたってことだ」


ミアがきゅっとポーチを胸に抱えた。


「絶対、渡さない!」


「その意気だ」


拠点の入口に戻り、周囲を確認する。


「異常なし。入るぞ」


「うん!」


拠点内部は無事だった。


俺たちは荷物を整理し、戦利品を並べた。


「弾薬、補充完了!」


「食料も三日分は確保」


「水もある!」


「通信コードもある」


ミアと顔を見合わせ、拳を合わせた。


「これで、生き延びる確率が上がったな」


「うんっ!」


俺たちは微笑み合った。

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