4年越しの君へ
ごまダンゴ
第1話 出会い
5年前のことだ。
前の彼女と別れ、残ったのは、日常に空いた大きな空白だった。
行き場のない深い寂しさだった。
そのすき間を埋めるように、
俺は「声とも」というアプリを始めた。
そこには、軽く話す人も、潮らしい人もいた。
そんな中、ひとつのメッセージが届いた。
「飯田の高校に通ってます」
おずおずと、でもあたたかい文字だった。
声も顔も知らない。
だけど、なぜかそのメッセージは、少しだけ心を温めた。
長野県出身だと聞いて、
心にすっと風が流れた。
俺にも長野に縁があったから、
その約束めいた小さな縁に、何かを感じた。
本来なら、声を交わすためのアプリだったけれど、
俺たちはもっぱらチャットだけで会話をつないでいた。
声も顔も知らない。
だけど文字だけで、不思議なほど心が近づいていった。
スマホの画面越しの、小さなメッセージたち。
それらを交わすたびに、
俺たちは心の距離を縮めていった。
年齢も離れ、住む場所も違ったけれど、
そんなことは関係なかった。
気がつけば、俺は、
すぐ近くで、俺のために存在してくれているような、
たった一人を深く大切に思うようになっていた。
これが、俺たちの出会いの始まりだった。
さりげなく、けれど確かな、世界でたった一つの縁。
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