アントニオ猪木

ヤマシタ アキヒロ

アントニオ猪木

ある夏の夕暮れ

多摩川の土手で

ギターを弾いていると


遠くから

人並み外れて

容貌魁偉な男が

走って来た


男は

アントニオ猪木だった


トレーニング中の

猪木さんは

ちょっと一息

といった様子で


私の横に

胡坐をかき


鰐のような

歯を見せながら

ニッコリと笑った


青年よ

元気にやってるか?


その笑顔は

そう語っていた


そして二分ほど

休んだあと


大きな体を

揺らしながら

またスタスタと

走り去った


誰もいない

夕暮れの土手に

アントニオ猪木と

ただ二人―――


私はギターを弾きながら

しばらくその余韻に

ひたっていた


ビンタこそ

喰らわなかったが


思いがけず触れた

そのやさしい

素顔に


私は大きな

元気を

もらった気がした


元気があれば

何だって出来る―――


あなたのその

シンプルなスローガンは

今も私の

胸にある


三十年も

昔の話である


      (了)

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アントニオ猪木 ヤマシタ アキヒロ @09063499480

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