昇級試験
「昇級試験?」
スライム討伐を皮切りに、数々のモンスターの討伐依頼をこなして着々と冒険者としての実績を積み上げていたアンカラ達に昇級試験の話が持ちかけられる。
「はい、あなた方は冒険者になって一か月ですが、その間にモンスター討伐などの実績を積み重ねたことから、規定に基づいて駆け出し冒険者から下級冒険者への昇級試験の受験許可が下りました」
書類に目を通しながら、二人にそう通達する受付嬢。
「それで、試験内容はどんな感じなんですか?」
内容を問うペータ。
始めはモンスターにおびえる少年ではあったが、恐れ知らずのアンカラに振り回されているうちに戦いの経験を積み、自信を持ち始めた。
「はい、モンスターの巣、いわゆるダンジョンを攻略していただきます」
そう言って資料と地図を渡す。
『下級冒険者昇級試験
目的地 アスリー平原
目的 スライムの巣窟の攻略。
依頼主 冒険者ギルド
駆け出し冒険者から下級冒険者への昇級試験です。
他の冒険者パーティと協力してスライムの巣窟を攻略してください』
「ダンジョンですか…」
身構えるペータ。
ダンジョンと呼ばれる場所は多くのモンスターが生息しており、非常に危険な場所だと一般常識で教えられている。
その分、攻略できれば討伐したモンスターの素材やモンスターが戦利品として持ち帰った金品などが大量に手に入り、懐が潤う。
「さっそくダンジョンに向かうぞ!ついて来い、ペータ」
「待ってください」
ギルドから飛び出してダンジョンに向かおうとしたアンカラを受付嬢は慌てて呼び止める。
「試験は一か月後です。今行っても受験はできません。
それと、失礼ながらお二方の装備が…」
二人の貧相な装備に言葉を詰まらせる受付嬢。
通常ならば元戦闘職でもない限り、駆け出し冒険者は薬草採取や農作業の手伝いなどの比較的安全なクエストをこなして、数か月かけてランクアップに必要な実績を積み重ねていき、その過程で装備が充実して行く。
しかしアンカラが「狼女の言うことなんか知らん」と言ってリラの忠告を無視して評価査定の大きいモンスター討伐のクエストばかりを受け続けていたために、昇級の試験許可が早く降りてしまった。
ギルドの規定上は問題ないのだが、三日前に鍛冶屋に注文した装備の完成が間に合わず、二人の武器や防具は支給された時のまま。
最低限の機能しかない装備で、危険生物のうごめくダンジョンに挑むのは自殺行為に等しい。
「ひとまず、装備が完成するまで待ちましょうか」
「ちっ」
お預けを食らったアンカラの舌打ちが、ギルドに響く。
「そういえば、この試験を受けるのは僕達だけですか?」
「いえ、『白銀の翼』というパーティの方々と一緒に昇級試験を行う予定です。ですのでパーティ同士でトラブルを起こさないようにお願いしますね?」
アンカラの目を見て念を押す受付嬢。
対する彼女は「ハイハイ」とだけ応えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます