転校生
「行ってきまーす。」
私はいつもの通り、学校を出た。風がさらさらと吹く。
今日は転校生が来るらしい。
あ、自己紹介しないとね。
私の名前は、エミリア・ベルツ。ブロンド髪でアズールカラーの目の学級委員の女の子。まあ、よろしくね。
あ、そんなこと言っている間に学校に着いた。
「おはよう。」
教室に入るとメガネを掛けた小柄な男の子が先に来ていた。
彼の名前は、エルマー・ケストナー。このクラスで一番背が低い男の子。で、このクラスで一番頭の良い人。
「ん、おはよう。」
こいつ、中2になったというのにまだ声が高い。ネズミみたいにチョコマカ動くんだから、背の高い私とはよくぶつかる。
「おはよー!」
ソフィア・ベッカーがやって来た。赤毛をツインテールにしたソバカスの女の子だ。この子は頭が良いのか悪いのか分からない。ろくに公式をを覚えないくせに、編み出してくる。で、編み出すのにすごく時間がかかるから、1問5点のテストだと、5点しか取れない。全くもう⋯。
最後に、レオン・アーレンスがやって来た。大柄で元気のいいやつだ。
「エミリア、俺、遅れたか?」
「チャイムの30秒前、ギリギリセーフ。」
「よっしゃ!」
あんたは何で30秒前で「よっしゃ!」になるんだよ!
最後にデーべライナー先生があくびしながらやって来た。美人の先生があくびするだけでも絵になる。ライラックの花畑に入ってグレーのワンピースを着ればたちまち美術の先生がやってきてスケッチするだろう。
「今日は転校生が来まーす。入ってきてー。」
「Ja(ヤー)」
綺麗だけど、少したどたどしいドイツ語が聞こえて一人の少女が入ってきた。
天使が通ったように静かになる。
そして私も、最初見た時、驚愕してしまった。
きっと東洋人だろう。肩までの艷やかな黒髪、深い瑠璃紺色の目、雪みたいに真っ白な肌。私は生まれてこの方、こんなにきれいな人は見たことがなかった。
「私の名前は、ユキ・シュミットです。好きなことは⋯読書と手芸です。よろしくお願いします。」
丁寧にペコリと頭を下げる。すごく礼儀正しい。
「じゃあ、シュミットさんはベッカーさんの隣ね。」
「Ja(ヤー)」
シュミットさんはスタスタと歩いていく。
「じゃあ、授業始めますよー。」
休み時間、私はデーべライナー先生に呼び出された。
「あなた、学級委員だし、シュミットさんはまだこの学校がどんな感じなのか判らないから、手伝ってあげてね。」
「はい。先生。で、ちょっと聞きたいことがあるんですが⋯。」
先生は不思議そうに首を傾げ、
「何?」
と聞いた。
「シュミットさんは東洋人ですか?」
にっこり笑って答えてくれた。
「そうね、ドイツ人のクオーターって話だった。まあ、そんなわけでよろしくね。」
先生はちょっと小走りで走っていった。
やってしまった⋯。
聞かないほうが良いかなと思っていたけれど、ちょっとした好奇心?で質問してしまった。多分、ソフィアだったら聞かなかっただろうなあ⋯。
はあ、とため息を付いて席についた。
授業中、問題が終わったからハリボーを一つ食べながら考えていた。(ドイツでは授業中に食べもを食べることが出来る。)
彼女――シュミットさんには好感があった。
今日、一緒に帰ってみようかな⋯。
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