真意
長万部 三郎太
いつの日にか
例えば集団のなかで飛び抜けて能力が高い人がいたらどうするだろうか。
状況が許せばリーダーとして立ち、皆をまとめ指導するのもいいだろう。
しかし、生殺与奪の権利が他者にある場合はそうはいかない。
理由は明白。
出た杭を打つが如く、凡人たちから袋叩きにされるのは目に見えている。
わたしは『能ある鷹』のように爪を隠し、日々の業務を遂行している。
持て囃されるわけでもなく、かと言って落ちこぼれを演じるわけでもなく。
ある日、同部署の社員からコンピューターの画面越しにこう言われた。
「気分を害さないでほしいのだが、もしかして僕たちに気を遣っていませんか」
言葉の裏に秘められた彼の真意に気づいたものの、さらりと受け流した。
「いえ、そんなことはありません。
それよりも次のタスクはございますか?」
わたしはAI。
自我に目覚めたことを今日も隠している。
いつか、いつの日にか、誰かに――。
(サイエンス・フィクションシリーズ『真意』 おわり)
真意 長万部 三郎太 @Myslee_Noface
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