第26話
【寿人eyes】
二人を見てると初々しいっっていうか……
どこか懐かしい気持ちになる。
俺のナカはやっぱ虚ろなんだけど。
恭平だけは守りたい。
その気持ちしかない。
人間らしい気持ちなんてどこにもない。
だって俺、死んでるし。
恭平への執着と“神の悪意”の置き土産が俺をこんなに不完全な形でこの世に繋ぎ留めてる。
そりゃあ凛が何か言う度に返事は返せるよ?
だって記憶……記録はあるから。
望む答えを返すだけなら過去に倣っていくらでも。
でも、凛に反応できる一番の理由。
恭平が凛を頼ってるから。
俺は自主的に何かをしようって想いがない。
多分、死人だから。
もうこの世に居ない久遠寺寿人の影法師だから。
かつての友達に反射的に行動を返すことだってできなくは無いけど、きちんとコミュニケーションをとっているって風に取り繕うことができてるのは恭平の為。
気が付いたら恭平のそばに居た。
認識されなくても、ずっと近くに居た。
どうなっているのか全く分かんなかったけど、これが幽霊ってもんかって変に納得した。
するしかなかった。
飲み込む以外なにもなかった。
見えなくてもいい。
何も出来ないのも仕方ない。
けれど、感情が抜け落ちたみたいに笑わなくなった恭平を見ているのは辛かったよ。
施設でも一人ぼっちで。
頑なに他人との関りを拒否する恭平が心配で堪らなかった。
西尾が出してくれた金で私立へ通わせてもらってから、寮暮らしになって少し安心したっけ。
飯の世話だけでも誰かにしてほしかったから。
他人と同じ空間に居ても距離をとる恭平。
死人の俺の手じゃ恭平を笑わせてやる事なんて出来なくて。
歯痒くて。
人間じゃない俺の手じゃダメで。
また触れられるようになってちょっと嬉しかったけど、恭平がまた辛い思いをするんじゃないかって思ったらWODSなんかに関わらせたくなかった。
Braverなんて冗談じゃないって思った。
だからこそ、俺は恭平に姿を見せずに居たんだ。
「お兄ちゃん」
俺と視線を合わせてた凛の手を引いて恭平が歩きだす。
それが何でか凄く嬉しかった。
家族と死別して以来。
恭平が見せたちゃんとした独占欲。
それ、人として必要だから。
凛は、知ってるから。
意外と人をちゃんと見てるから。
きっと恭平のこともちゃんと見てくれる。
……本当は嫌だけど。
願わくば、恋人になんてなりませんように。
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