私たちは今日もキスをする

風間悟

The first kiss:2人のキスは恋の味

「んん……、ひか、り……」

「あむ……、んむぅ……、はむ……」


 残光が満たす放課後の教室、誰もいない静かな教室で、私たちは今日もキスをする。


 誰かに見られるかも知れないというドキドキ感、こんな事をしているのがバレたら終わってしまうという緊張感。


 それでも、目の前にいる女の子とキスをしたいという欲求から来る背徳感が、彼女の唇から感じる熱が、互いの吐息が、その全部がこの行為を熱くする。



(あぁ、幸せってこういう事を言うんだね……)



 それからも息継ぎすら忘れて私たちはキスに没頭する。それだけで幸福感が湧き、自然と胸の奥が熱くなる。もっと欲しくなる。もっと求めてしまう。


 そうして暫くしてから、ゆっくりとお互いに唇を離す。流石にもう息が限界だった。


「はぁ、はぁ……」

「はぁ……、はぁ……」


 絶え絶えの息を整える。それでも互いに見つめ合う事は止めず、ぎゅっと抱き締めている彼女の体温が、彼女の吐息が、まだまだ満足していない事を私に教えてくれる。


 でも、それは私も同じで──。


「ねぇ、。 まだ、キス、したい……」

「うん、私もだよ。まだ、足りないよね」


「ふふっ、一緒だね」

「うん、一緒……、だから、もっとしよ」

「そうだね。光……」


 そうして、私たちはもう一度キスをする。次は唇だけじゃない。お互いの舌を絡み合いながら、もっとお互いの事を、激しく求め合う行為。そう、大人のキスだ。



(気持ちいい……)



 互いの舌を絡め合っているだけなのに、さっきまでの普通のキスとは違う。もっと深い所で愛華と繋がってる。そんな感覚にさえ陥る。


 もっと感じたい、もっと触れ合いたい。もっと堪能したい。そんな感情しか湧いてこない。


「んんっ……、んぅっ、ちゅぱっ、ぴちゃ……」

「んふぅ……、あむぅ……、んん、ちゅ」


 そうして、静まり返った放課後の教室に響くのは、ぴちゃぴちゃと背徳的でわざとらしいキスの音をだけ。その音を聞く度に興奮して、キスがより激しくなる。そして、触れ合う舌の感触に、ゾワゾワと背筋をくすぐるような感覚が走る。



 そして、またお互いに息継ぎも忘れて限界に達した後、唇を離す。たらんと、お互いの絡み合った唾液が糸を引いていて、それが私たちを繋いでいる。



 その光景をただただ眺めていると、愛華は自身の人差し指で糸を引いてる唾液を絡め取り、ペロリと舐め取る。


「っ!」

「ふふっ、光の唾液、……甘くて美味しい」

「も、もうぅ! そんな恥ずかしい事、言わないで!」

「いいじゃない。今さっきまでもっと恥ずかしい事をしていたんだから……」

「そ、そうだけどぉ……。と言うか、私だけじゃなくて、愛華の奴も混ざってるんだから、2人の唾液が甘いんだよ! …………あひゅぅ」


 そう思わず口に出した言葉に、自分自身でダメージを受けてしまった。唾液だなんて、普通他人には絶対に使わない言葉なのに……。


「ふふふ、光はほんと、可愛いよね」

「むぅぅぅ! 愛華がそんなやらしい事をするからだよぉ! こうなったら……、えいっ!」


「え、あ、ひゃぁあ!? ちょ、ちょっと、光! あぁ、そこ、舐めちゃ、ダメぇぇ……」



(ふんだ。愛華の弱い所は知ってるんだよ!)



 今さっき、自身で舐めてた人差し指を今度は私がパクリと咥えて舐め回す。愛華は指先が敏感だから、こうしてあげると、とても可愛い声を出す。だからもっとしたくなる。それに、愛華の指先からは、なんとも言えない甘さがあって美味しい。もっと食べたくなる。


(うぅ……、でも、こうしてるだけで、変な気分になっちゃう……)


 そうして、ぴちゃぴちゃとわざとらしい音を出しながら舐め回す。すると次第に腰が砕けてきたのか、ヘロヘロと床に座り込む。



「はぁ、はぁ……。も、もう……、やめ……、て」

「ねぇ、愛華。流石にその顔はヤバイよ」



 さっきの攻撃で、愛華の頬は赤く高揚し、とても妖艶な表情になっている。それに、物欲しそうな眼差しで私を見つめて来るから、更にヤバい。正直言って、エロい。


「ひ、光が、……あんな、事を、するからじゃない」

「あははは……、まぁ、そうなんだけどね。でも、これでお相子だね」

「ハァハァ……、も、もうぅ、お相子どころじゃないからね! ……でも、気持ちよかったから許す」

「あははは、許された!」


 息が整ったのか、愛華の口調は普段通りに戻った。なので、座り込んでる愛華に手を差し伸べると、愛華はその手を取る。


「よっと!」

「ありがとう、光。やっぱり上手ね……」

「ふふん! それ程でもないよ」

「やれやれね。少し前までは、あんなにタジタジだったのに、いつの間にか、立場が逆転しちゃったわ」

「あははは! 愛華がいけないんだよ? あんなにしてた私を、愛華色に染めちゃうんだから!」


 そう伝えてみれば、クスクスと笑いつつ、『そうだったわね』と愛華は答える。


 私だって、最初っからこんなんじゃなかった。元々はノーマルだったのに、愛華がアブノーマルに染めちゃうのがいけないんだ。おかげでもう沼の底までどっぷりとつかってしまった。


「さて、……と。そろそろ帰りましょうか」

「そうだね~。愛華のお家、ここから遠いもんね!」

「はぁぁ……。ほんと、これだけは残念でならないわ」


 愛華はそう嘆きながら、左手を差し出す。なので、私も右手でその手と繋ぐ。だけど、ただ繋ぐだけじゃない。指と指を絡めながら繋ぐ、所謂恋人繋ぎだ。


「うーん、やっぱり愛華の手は暖かいね」

「そう言う、光こそ。とっても暖かくって、気持ちいいわ」

「え、そう? ……じゃあ、そんな愛華にはご褒美あげないとだね!」

「え、あ、待って! あぁ、ま、また……、そこ、弱いのぉ……」


 繋いでる指でピクピクと動かしてあげると、愛華は『んんっ』や『あんっ』と言った、とても危ない声を出しながら、悶え始める。ほんと、こういう時の愛華は可愛くって、大好きだ。



「あははは、愛華よわぁぁい!」

「ほ、ほんとに、いじわるな女の子よね、光は」



 そんな事を言うけど、愛華の顔はもっとして欲しいと懇願しているかの様な表情を浮かべている。まぁ流石にこれ以上残っていると、愛華が怒られちゃうから、やらないけどね。



「それはまた明日だね! それじゃ、そろそろ帰ろっか!」

「はぁ……。それ、さっき私が言った言葉よ」



 そうして、教室を出て、楽しく話しながら下駄履へと向かう。これが私たちの日常だ。



 男女の恋愛じゃない。女と女の恋愛。だけど、どんなカップルよりも甘くて美味しい、そんな百合カップルだ!




────────────────────────


ここまで読んでいただきありがとうございます!


初の百合投稿作品となります


キスを題材とし、少し官能的な表現も入れているため、運営から怒られないか怖いですが、なるべく怒られないよう気を付けたいなと思います


また、見切り発車な部分があるため、途中から更新頻度が落ちるかもしれませんが、なるべる毎日投稿出来たらなと思っています


それでは、また明日の投稿でお会いしましょう

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