光の円環ートーラスー

@siki_oriori

光の円環ートーラスー

作者:四季 折々


※注意※

叫びシーンあり/残虐なシーンあり/残酷なシーンあり

また、すべてフィクションです。

とある描写関連において、真似しないようにお願いいたします。

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【登場人物】


白上 光♂:しろがみ ひかる。高校生。人間には珍しいアルビノ種。併発して、血が止まりにくい病を患っている。

     容姿で寄ってくる人が多いため、それを煩わしく思っている。蒼井がお気に入り。


蒼井 平音♂:あおい ひらね。高校生。感情が表に出ない。言われたことは素直に頷き、良く人を見ている。

      白上に対して、どこか粘着している様が見られる。


中野 信也♂:なかの しんや。高校生。白上が気になっている。本心を隠したくて、つい逆のことをしてしまいがち。

      無邪気で、犬のように従順な男。


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【配役一覧】


白上 光♂:


蒼井 平音♂:


中野 信也♂:


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比率:3:0


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オンリーONEシナリオ2526

4月

・ジャンル:SF

・テーマ「入学」をテーマにしたシナリオです


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ー台本使用規約についてー

・各種配信媒体にて、上演することは自由です。

 使用する際、任意ではありますが、励みになりますのでご連絡をいただければ幸いです。

 アーカイブやライブ配信を喜んで見に行かせていただきます。

 x(旧Twitter):https://twitter.com/@siki_oriori_wt (四季 折々)


・舞台公演やボイスドラマなど、金銭が発生する場合はご連絡をお願いします。

※投げ銭やアイテムにお金がかかる配信に関しては除外とする。


・基本的に、アドリブにて言葉を足すことや話の流れを大きく変えるようなことは禁止とさせていただきます。

 性別を変えることも控えていただきますよう、伏してお願い申し上げます。


・何かございましたら、ご連絡いただければ幸いです。

 メール:sikioriori0429@gmail.com


・著作権は放棄しておりません。


皆様に楽しんでいただけますよう、上記を守って遊んでください


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以下本編




0:とある病院の一室。二人の男性が相対している。髪の白い男はベッドで横たわっている。

  青色の髪の男は、冷めた目で見降ろしている。



蒼井:(M)この世は不公平だ。幸せにしたい人が不幸になる。どうして俺じゃないんだ。

      そう思いながら、輸血パックに繋がれた最愛の人を見下ろす。

      白い髪、白い肌、こちらを見る目は、日に当てられて赤く煌めいている。

      そして俺を見た彼が、口の端を上げて笑う。


白上:ねえ、僕の目を見て笑って?


蒼井:…笑う?こう?


白上:…うん、ヘタクソ。でも、そう…それ。それが見たかった。


蒼井:そっか。じゃあ、良かった。


白上:うん、良かった……良かった。

   もう、思い残すこと、ないや。


蒼井:(M)その日、白ちゃんは——息を引き取った。

      俺の、ヘタクソな笑い顔を見て、天に還っていった。

      また、幸せにできなかった。これじゃお前に顔向けができない。

      やり直すんだ、また学校から。白ちゃんに、ハッピーエンドを届けるために。



白上:(タイトルコール)「光の円環—トーラス—」

   ※「円環」を「トーラス」と読んでください



0:場面転換

  学校の教室、騒がしい中、一人窓辺側に座っている青い髪の男子生徒。

  そこに近づく、一人の男子生徒。



中野:…おい、お前。


蒼井:なんだ?


中野:名前は?


蒼井:…蒼井、平音。


中野:へー、このクラスのやつだっけ?


蒼井:ああ、そうだ。ずっといるぞ。


中野:あれ…そうだっけか。でも、喋るのは初めてだよな。


蒼井:…そうかもな。


中野:よろしくな、俺は中野信也。


蒼井:……よろしく。


中野:てか、お前表情筋動かねえのな。笑ってみろよ。


蒼井:笑う……分かった。こうか?


中野:ぶふっ!!

   ははは、いや全然動いてねえよ!お前、笑えねえのか?


蒼井:……。


中野:なあ、おい。今度は大口開けてさ……。


白上:(遮るように)何してんだ。


中野:あっ……!し、白上!


白上:僕の席、そいつの前なんだけど、騒がれると座りづらいから、静かにして。


中野:えっと、ごめんな…。


蒼井:すまない。


白上:…なんでキミが謝るの?


蒼井:原因は俺にある。笑えなかったから、からかわれた。


白上:あっそう。


中野:なあ白上、今日の放課後カラオケ行かねえか?

   金なら俺が出すからよ。


白上:なんで?


中野:なんでって……その、誘ったのは俺だから……。


白上:いや、なんで僕をカラオケに誘うの?


中野:は、え?


白上:だから、どうして僕を誘うの?他にもいるでしょ。


中野:俺は…!てか、誘っちゃ悪いかよ。


白上:別に。


中野:じゃあ…。


白上:でも僕、うるさい所嫌いだし、それに今日は、通院の日だから行かない。


中野:っ!!

   なんだよ、最初からそう言えよな!




0:中野、自分の席へ行く。




白上:……で、キミはなんで突っかかられてたの?


蒼井:知らない。でも、笑えって言われたから、笑ったんだ。


白上:そうなんだ。


蒼井:……。


白上:ねえ、喋るの初めてだよね?


蒼井:そうだな。


白上:なんで声かけなかったの?


蒼井:なんで、とは?


白上:だから、キミは気にならないの?


蒼井:何を?


白上:僕の髪が白いのは、なぜって思わないの?


蒼井:別に。おじいちゃんやおばあちゃんだって、髪が白いだろ。


白上:おじいちゃんとかと一緒にするの!?

   へえー、キミって変わってるんだね。


蒼井:変わってるか?


白上:ふふ、相当、ね。

   今のでキミのこと気に入るくらいには。


蒼井:キミじゃない。蒼井だ。


白上:下の名前は?


蒼井:平音。


白上:呼びにくい。だから蒼くんって呼ぶね。


蒼井:…そうか、構わない。


白上:…それだけ?


蒼井:何か問題が?


白上:キミの番でしょ。次は僕のあだ名を聞くところじゃない?


蒼井:うーん…申し訳ないが、俺は興味ない。

   別に好きに呼んでくれて構わないし、呼び方があるなら逆に教えてくれ。


白上:ぶっ、友達いなさそうな回答…ぶふ…!

   分かった、じゃあ友達がいないキミには、白ちゃんって呼ぶことを許してあげるよ!


蒼井:…わかった。許してくれた…白ちゃんが…そう望むなら。


白上:ははっ、素直だね!違和感半端ないけど。

   じゃあよろしく、変人蒼くん。


蒼井:「変人」もあだ名で追加か?


白上:いいや、主語と述語の成立。


中野:(小声)なんだよ。白上と仲良くしやがって…俺だって…。




0:放課後




白上:さて、放課後だけど、蒼くんこの後何か予定ある?


蒼井:いや。


白上:じゃあ、僕と一緒に帰ろう。

蒼井:…?

   通院の都合で病院に行くんだろ?俺が白ちゃんに付き添ってどうする。


白上:気に入ったんだ、キミのこと。途中まででいいから、付き合ってよ。


蒼井:随分とわがままだな。わかった。途中までな。


中野:し、白上!


白上:……。


中野:俺も、途中まで帰っていいか!


蒼井:…なぜだ?


中野:なんでお前が答えるんだ、無感情野郎。


蒼井:白ちゃんの顔にそう書いてあったから。


白上:僕の気持ちを汲んでくれたの?はは、本当におもしろいなあ。

   それで、どうして?


中野:お前と…話したいんだよ。

   だから、その…。


白上:…いいよ。じゃあ、一緒に帰ろうか。

   蒼くん、いい?


蒼井:白ちゃんがいいなら、いいよ。


中野:し、白ちゃ……!?俺もっ!


白上:キミはダメ。


中野:…どうして。


白上:キミは、僕に興味があるから、ダメ。


中野:興味……くっ。(顔を真っ赤にさせる)


蒼井:…?

   興味があるのは良いことだぞ、白ちゃん。少なくとも、俺よりは。


白上:そうじゃないんだよねー。まあ、そういう鈍感な蒼くんだから、気に入ったんだけど。


中野:……なんだよ、興味があっちゃ、いけねえのかよ。


白上:違う。キミが興味あるのは、僕の容姿だけだよ。


中野:そんな、ちがっ!!


蒼井:(被せるように)そういえば、脱色しているように髪は白いな。

   目も、灰色…いや青色みたいな…。


白上:さらに日に当たると赤くなるんだよ、蒼くん。

   でも、直視すると目がかなり痛いんだけど…。それに視力も悪いから、人の顔の分別もつかない。

   困った病気なんだよ。


蒼井:(まじまじと見る)ふーん……。辛いこともあるだろうが、困っていても、生きていることで俺と会えたんだ。

   それでいいことだろう。


白上:…!


蒼井:それに、こうやって……ワンコみたいなやつも、やってくるからな。


中野:誰がワンコだ!俺は…ただ…!


白上:はあ、出会ってまだ時間も経ってないのに、おもしろいな。

   まあ、好みはあるからさ。僕は、キミが気に食わないだけ。


中野:じゃあなんで、そいつはいいんだよ。


白上:無関心だから。


中野:無関心…?


白上:そう、僕に興味ない。だよね?


蒼井:……白ちゃんの容姿にも、名前も、生活態度も勉強に対しても興味がない。


中野:じゃあ…!


蒼井:話しかけてきたから、話しただけだ。それだけ。


中野:…!?


白上:ほら、こういうところだよ!こんなにおもしろいことある?

   初めてだよ。目とか肌とか、髪のことも興味なくて、何の感情も向けてこない人。


中野:…お前、本当にコイツ見てもなんとも思わないのかよ。


蒼井:ああ。そもそも何を思うんだ。

   白ちゃんは…ただ髪の毛が白くて、肌も雪のように白い。そして目が色彩豊か。光の当たる角度によって光彩が変わるから、見ていて飽きない。

   性格だって、毒のようにはっきりモノ申すところがあるだけで、他のやつらと何ら遜色ない。


白上:言うねえ。まあ世間一般では、それを興味あると呼ぶと思うんだけど…まあ蒼くんはこんな感じなんだね。

   それにしても…どうして僕は後ろにいたのを知らなかったんだろう?


蒼井:存在感薄いからな。それに、お前も周りにあまり興味なかっただろうし。!!


白上:……そうなのかな。

   そうなの、かも?というか、そもそも視力弱いし、見ようともしなかったからね。


中野:いやでも、実際に俺も……。


蒼井:(遮るように)いたさ。お前の目には、白ちゃんしか映っていなかったってことだ。


中野:う、うるせえな!!

   だって、しょうがないだろ!


白上:なにが?


中野:お前は、目を引くんだよ…白い髪に、憂いた感じの瞳に、透き通った肌に…。

   弱々しい見た目なのに、気は強いし、すぐ噛みつくし、人の名前と顔忘れるしで、ギャップがあって…。

   とにかくかっこいいって思ったんだよ、悪いか!!


白上:……いや、あの、全然悪くないんだけどさ。ここは教室だよ?


中野:は…?


白上:てかさっきから、雑多の声が耳障りで仕方ないんだよね。

   キミの声もキンキンしてうるさいし…公共の場なんだけど、ここは。


中野:いや、俺はっ!!


蒼井:ワンコ、周りを見てみろ。


中野:えっ。




0:教室内、ざわめくクラスメイト。




蒼井:……それに傍(はた)から見たら、顔が赤いことも相まって、告白シーンみたいだな。


中野:(M)くっ!……いや、ここまで言ったら引き返せねえ、もう勢いだ!


中野:ああそうだよ、お前が好きで、何が悪い!!


白上:うるさいって、だから…。

   ……でも、キミは僕のこと何も知らないよね。さっきも言ったでしょ?

   キミが興味あるのは……。


中野:(遮るように)じゃあ、教えてくれるのかよ。白上のこと。


白上:だから興味がない、キミに。


中野:興味を持たせてみせる!諦めねえからな!


白上:努力しても無駄。てか、公衆の面前で告白って、恥ずかしくないの?

   本当に、静かにしてよ。


中野:もうここまで来たら、恥ずかしくねえよ!それに、俺はこいつに負けるつもり、ねえから。


蒼井:…俺?…たぶん、勝負にならないと思う。だって……。


中野:…?だって、なんだよ。


蒼井:……どうせ、キミが勝つんだから。


中野:なんだそれ。


白上:てか、もうこんな時間じゃん。早く病院行かないと。


蒼井:待って、今白ちゃんは注目の的だから、さらにうるさくなる。


白上:うるさくなるって…それがどうかした?


蒼井:目が見えづらいなら、聴覚に頼っている場合が多いんじゃない?

   だから、騒音で煩わしくなる。今だって、相当ストレスになってるよね。


中野:え、マジか!?


白上:……!蒼くん、どうして…。


蒼井:聴覚過敏じゃないけど、それに近いんじゃないかなって予想してる。


白上:…もしかして、蒼くんってエスパーかなんか?


蒼井:何言ってるんだ。お前が、昔教えてくれたんだ。

   (小声)……知らないだろうけど。


白上:え…?


蒼井:ワンコ。


中野:誰がワンコだ!


蒼井:耳栓、これで買ってきて。学校の購買に売ってるの、見たから。


中野:はあ?マジかよ、売ってんのかよ?

   行ってくるから、とりあえず動くなよ!




0:中野、教室を出る




白上:……。


蒼井:白ちゃんの顔見たら、なんとなく分かるよ。


白上:…顔に出てた?


蒼井:うん、それに、さっきからうるさいって言葉をたくさん使ってるから。

   それが、少し心配だったし。


白上:心配…はは、感情がないんじゃなくて、表に出づらいのか。


蒼井:感情はちゃんとある、人間だし。

   ……あと、守るって約束したから。


白上:約束?


蒼井:ああ。


白上:誰と?


蒼井:お前と。


白上:何の…?


蒼井:それは…。


中野:(遮るように)おーい、買ってきたぞ!

   本当に売ってたわ!ほら白上、使え。


白上:ああ、ありがとう…。


中野:早くそれ付けろ。もうあんまり時間ねえんだろ、病院。


白上:そうだけど…。

   ん…?結局キミも来るのか、ワンコくん。


中野:誰がワンコだ!てか、当たりま、え…って、え?


白上:何、ワンコ。


中野:呼び捨て…!

   (独り言のように)あー、クッソ…!顔にやけるなあ。


蒼井:ワンコ、ニヤニヤするのは後にしろ。ほら行くぞ、騒音がさらに大きくなる。


中野:あ、ああ、わかってるよ!


白上:ワンコ、遅い。


中野:てか、ワンコじゃなくて、中野信也!同じクラスなんだから、いい加減覚えろって。


蒼井:中野信也。


中野:お前じゃねえ!


白上:蒼くん、ワンコ、遊んでないで早く行くよ。


中野:だから……!!




蒼井:(M)俺は今日、お前の命を救うんだ。もうあんな悲劇は、繰り返さない。

   前の時だって…いや、キミがいつも死ぬたびに誓ったんだ。あの病室で。




0:場面転換

  とある病院の一室。二人の男性が相対している。髪の白い男はベッドで横たわっている。

  青色の髪の男は、冷めた目で見降ろしている。




白上:ねえ、僕の目を見て笑って?


蒼井:…笑う?こう?


白上:…うん、ヘタクソ。でも、そう…それ。それが見たかった。


蒼井:そっか。じゃあ、良かった。


白上:うん、良かった……良かった。

   もう、思い残すこと、ないや。


中野:(病室に勢いよく入る)……はぁ、は…あ……蒼井!しろ、がみ、は?


蒼井:……今、息を引き取った。


中野:おい…嘘だろ。


蒼井:本当だ。


中野:……なあ、お前は、何してんだ。


蒼井:何って?


中野:だから、何突っ立ってんだ…仮にも、お前の恋人だろうが!!

   無表情も大概にしろよ…涙一つくらい零したらどうなんだよ!!


蒼井:……ふっ、涙か。


中野:このっ!!(胸倉を掴む)


蒼井:これで、29回目なんだ!


中野:あ?


蒼井:白ちゃんを失うのが。何度やっても、何度やっても、車にはねられて、階段から落ちて、深い傷を負って、他にもいろんな方法で白ちゃんが死ぬのを見てきた。

   人間のアルビノで、たまに併発すると言われている病気のせいで。


中野:……なんだよそれ。


蒼井:併発するものとは関係ないのに、風邪を拗らせたことだって、自殺したことだってあったんだ。


中野:おい、質問に答えろよ。何の話だそれは!


蒼井:あ、そうそう、併発する病気なんだけどさ、血が止まりにくい病気なんだよ。少しの傷を負うのでさえも、気を付けなければならない。


中野:質問に答えないなら、もう喋るな。


蒼井:注射だって、終わった後血が何十分も止まらないことがある。それなのに…今回は交通事故だ。


中野:聞いてんのか。


蒼井:止まるはずがない。輸血だってタダじゃないし、有限だ。


中野:喋るなテメエ!


蒼井:あれ、これ話したの…何回目だっけ?


中野:蒼井!!


蒼井:……?


中野:…それが…お前の話が、どう関係あるんだ。


蒼井:言っただろう、29回目だと。俺は、29回、白ちゃんを救えなかった。

   何度もやり直してるのに、輪から外れないんだ。


中野:何の話してんだ、だから。


蒼井:(独り言のように)…いや待てよ。そうか、俺が恋人だから。俺じゃなければ。


中野:なあ、白上の前でする話じゃねえだろ…!


蒼井:そうか、お前が恋人になれば、結末は変わるんだ。


中野:結末…?


蒼井:次は、ワンコ、お前が白ちゃんの恋人になるんだ!そうすれば、白ちゃんは救われる、息ができるようになるんだ!


中野:恋人…?


蒼井:(被せるように)大丈夫、ワンコが白ちゃんのこと好きだって、知ってるよ。


中野:おいやめろ。


蒼井:(被せるように)俺のこと妬んでたのだって、鋭い目でこっちを見ていたのだって、全部知ってる。


中野:おい。


蒼井:(被せるように)好きだったんだろ、白ちゃんのこと。愛してたんだろ?


中野:(遮るように)平音!!!!(蒼井を平手打ちする)


蒼井:……。


中野:…言ってること、自分で気づかないのかよ…おかしいんだよお前!


蒼井:…………ああ、そうだね。


中野:だったらっ!


蒼井:そう、俺がおかしいから失敗したんだ。だから、またやり直すんだよ。


中野:やり直す…?


蒼井:待っててね、白ちゃん。


白上:『蒼くん』


蒼井:俺、またそっちに行くよ。


白上:『ヘタクソな笑顔』


蒼井:俺の笑顔。


白上:『見せてよ』


蒼井:見せに行くよ!


中野:そのメスどっから…!

   はっ!!おい、やめろっ!


蒼井:(自分の首に突き刺す)ぐ…ごふっ!あ………が……ぐうぅ……う!


中野:う、うわああああああああ!!!!!!


蒼井:(M)大丈夫。死んだら、また元通り。今度は、ワンコ……いや、中野信也を、白ちゃんの恋人にするんだ。

   そしたら——そう、思ったのに。




0:場面転換

  現在。工事現場。鉄骨の下敷きになっている白上。

  周りは悲鳴や怒号で溢れている。




蒼井:そう誓ったのに、約束したのに……どうして?


白上:う……。


蒼井:白ちゃん、どうして?


中野:白上!!!


蒼井:どうして、またケガしてるの?鉄骨なんて、今までなかった。


中野:おい、蒼井テメェ、何ボーッと突っ立ってやがる!


蒼井:足が…今度は足を潰してしまったんだね?


中野:そうだ、救急車を呼べ!


蒼井:無理だよ。これはもう、助からない。


中野:はあ!?


蒼井:また、俺は約束を破ったんだ…。


中野:何言って…!


蒼井:(独り言のように)白ちゃん。今度は……次の白ちゃんは、必ず守ってみせるよ。


中野:えっと、とりあえず応急処置とか…いやその前にこの鉄骨どうにか…!


蒼井:(独り言のように)もっと俺考えるね。考えるために、感情なんていらないんだ。


中野:ああクソ、どうやるんだ!誰か!


蒼井:(独り言のように)倫理に反するとか、戻るために死ぬことが怖いだとか、白ちゃんを守るために痛いことだって耐えてみせる。


中野:おい蒼井、さっきから何ブツブツ言って…。


蒼井:大丈夫。白ちゃん、今は痛いかもしれないけど、もう少ししたら。だから、ね。(手を伸ばす)


中野:はっ、おい!



0:蒼井、白上の首を絞める。



白上:蒼、くん……?う…!


蒼井:今回ね、中野信也を恋人にしてあげる予定だったんだ。


中野:はあ……?


白上:う…あっ!


蒼井:でもその前にこんなことになってしまうなんて…ねえ、どうして?


白上:う…く、くる…し……!


中野:蒼井、テメエ何してっ!


蒼井:いつも俺が隣にいたから、今度は俺じゃない誰かを。

   でも、離れようとするとこうなるのかな?


白上:あ……たす、け……。


中野:白上を、離せ!!くっ、びくともしねえ、何だこの力!?


蒼井:今、楽にしてあげるね。シロチャン。


中野:頼む、離してくれ、死んじまう!


白上:あ……。(事切れる)


中野:…あ…?え?


蒼井:(首から手を離す)……。


中野:白…がみ?

   ……狂って、いやがる…どうして…どうして白上を殺したんだ!!!


蒼井:…どうして?だって、白ちゃんが死なないと、次にいけないんだ。

   早く次の仮説を試さなきゃ。


中野:は……?


蒼井:それじゃ、今行くよ、白ちゃん。

   タバコ、飲むと死ぬんだってね。美味しくなさそうだな。


中野:おい、どっからタバコなんて…!

   待て、なにしてっ!


蒼井:ゴクン。


中野:嘘だろ…早く吐き出せ!おい、聞いてんのか!

   おかしいよ、お前!!


蒼井:おかしい?俺が、死ぬこと?


中野:死ぬ……だけじゃ……。

   ああ……は、はは、何だよ、お前…。


蒼井:…?


中野:感情がないんじゃなくて、壊れてるだけなのかよ。

   一体、何をすれば…。


蒼井:だから、白ちゃんのためなら、救うためには、もっと考えなきゃいけないんだよ。


中野:考える…?


蒼井:今回で30回目。まだ、試してないこと、見てないこと、考えなきゃいけないこといっぱいあるんだ。

   白ちゃんに幸せを、あげるためにやらなきゃいけないことがあるんだ。


白上:『周りの反応とかさ、疲れるんだよ』


蒼井:耐えてきた白ちゃんのためにも。


白上:『蒼くんだけだよ、僕に安らぎを与えてくれるの』


蒼井:幸せにならなきゃ、白ちゃん。


白上:『僕のそば、離れないでよね。居場所なんだから。』


蒼井:そうだよ、僕は、白ちゃんの、居場所な、んだ、か…ら…ごふっ!!


白上:『ちょっと、髪さわらないで』


蒼井:ぐあ、ああ…!ううう、あ、げほっ!(吐く)


白上:『髪の色が好きって…僕のこと見てくれないの?』


蒼井:はあ、は……し、ろ…ちゃ……。


白上:『目も好き?はは、蒼くんはそういうやつだよ!』


蒼井:あ、ぐ…!げほ…。(吐く)


白上:『…本心を隠すところが好き?笑う顔も?

   うん、ありがとう、蒼くん。俺も大好きだよ。ずっと、傍にいてね。』


蒼井:うん……うん、傍にいるよ……し、ろ…ちゃん…(こと切れる)


中野:死んだのか……わかんねえよ…わかんねえ…。お前、可哀想なやつだな。

   言ってたことが本当なら、何回白上を不幸にするんだよ。お前も不幸なら…意味ねえだろ。



蒼井:(M)特別な人は、特別なハッピーエンドを迎えなきゃダメなんだ。

      白ちゃんは俺の特別だから、最高の幸せをプレゼントするって決めたんだ。

      俺の大事な…白ちゃん…。


白上:『蒼くん、一緒に幸せになろうね。』


蒼井:(M)次は、幸せに、するからね。




~fin~

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