女神様と俺

尾長律季

第1話

 この世界で肉体の「死」を迎えたら、魂が天国に行き、次の転生までそこで生活するらしい。この世界に国がたくさんあるように、天国にも何ヶ所も区画があって、似たような魂たちが集まる場所で暮らす。そう聞いていた。

「そう聞いていたのに、なんで俺だけ待機なの?!?!」

 叫んでも誰も来やしない。死んで、葬儀やらなんやら見守って、みんなの顔見て「またな」と言ってかっこよくこっちに来てみたらこれだ。

「俺が何したっていうんだよ」

 暖かくて、明るくて、なーんにも悩まないで良さそうな世界。でも、俺はひとり。生まれてから死ぬまでの反省会が終わってから、担当のスタッフみたいな人が「少々お待ちください」と言ってかれこれ2時間。生きていた頃、わりぃわりぃと言って笑顔で5時間遅れてきた友人のときも、約束したのに連絡もよこさず結局来なかったあいつのときも、ここまで退屈ではなかった。

「暇だ」

 こういうとき、スマホがあるといいんだろうけど、外でスマホをいじらないというマイルールがあるから、あってもいじれない。……まあないけど。

「ゲーム……」

 ぽつりと言ってみた。ゲームならマイルール違反ではない。まあ、それでもゲーム機持ってないーーーーーー

「ってあるじゃん!!」

 反省会からずっと正座だった俺の膝前に、使い込んだゲーム機一台。言ったらなんでも出てくるのか?どういう仕組みだよなんて心でツッコミを入れる。でも、そうか。今、俺は魂だけだ。魂だけってことは、ここは精神世界だから、可能なのか?

「スマホ」

 今度は膝の上にぽとんと落ちてきたスマホ。いったいどこからやってきたのか、出てくる瞬間を見逃してしまったが、俺が使っていたスマホが目の前にある。電源を入れると、数秒後俺の好きなアニメキャラが映し出され、このスマホが俺のものだと確信した。それから、暇で暇で仕様がなかったから、思いついたものをぽんぽん出していたら、ふと誰かに見られている気がして顔をあげてみたら、こちらを汚いものでも見るような目で見てくる女性がいた。

「汚い……」

「おい」

「あっ!ごっごめんなさい。言うつもりじゃ」

「そうかよ」

 申し訳なさそうにしつつも、この人こんな感じなのかみたいに思われてそうで、なんだか居心地が悪かった。

「あの、聞きたいんだけど、自分で出したものって戻せる?」

「はい、戻せます……よね?」

 まさかできないの?みたいな顔をして聞いてくる。

「こっちが聞いてるんだけど」

「えっと、こう、自分の部屋やバッグにしまうイメージをしていただければ」

 イメージか。なんだか異世界アニメの魔法使いみたいな話だな。部屋の引き出しにしまうイメージをしていく。右下ら辺を見ながら、意識を集中させていると、気がついた時には俺の周りにものがなくなっていた。

「こういう感じ?」

「はい、そうです!ありがとうございます。このままだったらどうしようかと」

「……一応俺、綺麗好きな方よ?」

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女神様と俺 尾長律季 @ritsukinosubako

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