第23話 「宝尽くし文様 💎 宝を求めて」

「宝尽くし文様に込めたのは、手の中にある、見えない宝物。」 💎


冬のある日、

古い町の片隅で、カイは一枚の不思議な地図を見つけた。


ぼろぼろの古本屋の棚で、紙に包まれていたそれは、

無数の線と記号が散りばめられた、小さな冒険の招待状のようだった。


地図の隅には、色とりどりの小さな模様――

打出の小槌、巻物、隠れ笠、分銅、丁子、宝珠……

それらが連なる宝尽くし文様が描かれていた。


「きっと、この町のどこかに、宝がある!」


胸を高鳴らせたカイは、雪の中へ駆け出した。



古い橋を渡り、

細い路地を曲がり、

誰も知らない階段を下りていく。


カイは地図を頼りに、小さな旅を続けた。


途中、通りすがりの人に道を尋ね、

凍った石畳に足を滑らせながらも、

何度も立ち上がった。


雪の舞う中、

小さな影は、確かに前へ進んでいた。



やがて、地図の印が指す場所に辿り着いた。

そこは、人気のない小さな公園だった。


ベンチの下を覗いても、

凍った池を見渡しても、

どこにも「宝」らしいものは見当たらない。


「……ここじゃなかったのかな。」


カイは肩を落としかけた。

そのとき。


雪の積もったベンチに、ひとつだけ残る足跡に気づいた。

それは、まるでカイを待っていたかのように、ぽつんと残っていた。


そっと近づくと、ベンチの上に小さな包みが置かれていた。


中には、一枚の布。


白地に宝尽くし文様が、ぎっしりと染められていた。


そして、短い手紙が添えられていた。


「宝は、探しているときにすでに手に入っている。

出会った景色、人、思い出――

それらすべてが、あなただけの宝です。」


カイは、はっと息をのんだ。


思い返せば、

知らない町の角で、笑って道を教えてくれた人。

凍った道で、手を貸してくれたおばあさん。

雪の中、誰も踏み入れていない真っ白な景色。


すべてが、今、胸の中で光っていた。



カイは宝尽くしの布をぎゅっと抱きしめた。


冒険は、確かにここにあった。

そして、手の中にはもう、

誰にも奪えない宝物があった。💎


📖【この話に登場した文様】

■ 宝尽くし文様(たからづくしもんよう)


由来:宝物や吉祥の品々を並べた縁起の良い文様


意味:幸運、富、学び、縁など、多様な「人生の宝物」の象徴

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