第23話 「宝尽くし文様 💎 宝を求めて」
「宝尽くし文様に込めたのは、手の中にある、見えない宝物。」 💎
冬のある日、
古い町の片隅で、カイは一枚の不思議な地図を見つけた。
ぼろぼろの古本屋の棚で、紙に包まれていたそれは、
無数の線と記号が散りばめられた、小さな冒険の招待状のようだった。
地図の隅には、色とりどりの小さな模様――
打出の小槌、巻物、隠れ笠、分銅、丁子、宝珠……
それらが連なる宝尽くし文様が描かれていた。
「きっと、この町のどこかに、宝がある!」
胸を高鳴らせたカイは、雪の中へ駆け出した。
◇
古い橋を渡り、
細い路地を曲がり、
誰も知らない階段を下りていく。
カイは地図を頼りに、小さな旅を続けた。
途中、通りすがりの人に道を尋ね、
凍った石畳に足を滑らせながらも、
何度も立ち上がった。
雪の舞う中、
小さな影は、確かに前へ進んでいた。
◇
やがて、地図の印が指す場所に辿り着いた。
そこは、人気のない小さな公園だった。
ベンチの下を覗いても、
凍った池を見渡しても、
どこにも「宝」らしいものは見当たらない。
「……ここじゃなかったのかな。」
カイは肩を落としかけた。
そのとき。
雪の積もったベンチに、ひとつだけ残る足跡に気づいた。
それは、まるでカイを待っていたかのように、ぽつんと残っていた。
そっと近づくと、ベンチの上に小さな包みが置かれていた。
中には、一枚の布。
白地に宝尽くし文様が、ぎっしりと染められていた。
そして、短い手紙が添えられていた。
「宝は、探しているときにすでに手に入っている。
出会った景色、人、思い出――
それらすべてが、あなただけの宝です。」
カイは、はっと息をのんだ。
思い返せば、
知らない町の角で、笑って道を教えてくれた人。
凍った道で、手を貸してくれたおばあさん。
雪の中、誰も踏み入れていない真っ白な景色。
すべてが、今、胸の中で光っていた。
◇
カイは宝尽くしの布をぎゅっと抱きしめた。
冒険は、確かにここにあった。
そして、手の中にはもう、
誰にも奪えない宝物があった。💎
📖【この話に登場した文様】
■ 宝尽くし文様(たからづくしもんよう)
由来:宝物や吉祥の品々を並べた縁起の良い文様
意味:幸運、富、学び、縁など、多様な「人生の宝物」の象徴
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます