第15話 「雲文様 ☁️ 雲の上の約束」

「雲文様に込めたのは、かたちを変えながら続いていく、夢と希望。」 ☁️


秋の終わり、空は澄み渡り、雲が高く流れていた。


町外れの丘に、ソラは毎日のように通っていた。

手には、大きな白い布。

そこには、やわらかな曲線で描かれた雲文様が広がっている。


ソラは、その布を広げて、草の上に寝転んだ。


「今日も、会えるかな。」


そうつぶやいて、空を見上げる。


かつて、この丘には、もう一人の少年――ユウキがいた。

二人は、毎日、雲を眺めながら、どこまでも続く夢の話をした。


「大人になったら、一緒に世界を見に行こう。」


それが、二人の約束だった。


でも、ユウキは、遠い町へ引っ越してしまった。



秋風が、布の雲模様をふわりと揺らす。

まるで本物の雲が、空へと旅立とうとしているみたいだった。


「ねえ、雲って、いいよね。」


かつてユウキがそう言った。


「形を変えながら、どこまでも流れてく。

立ち止まったり、戻ったりしないんだ。」


ソラはその言葉を思い出しながら、

空を流れる雲たちを目で追った。


(僕も、立ち止まらない。

怖くても、不安でも、前に進もう。)


白い布の上で、そっと拳を握った。


そのときだった。


「ソラ!」


風に乗って、どこか懐かしい声が聞こえた。


驚いて起き上がると、丘の向こうから、誰かが駆けてくる。

その顔を見た瞬間、ソラの胸が熱くなった。


「……ユウキ!」


大きく手を振り合いながら、二人は再び出会った。


変わったものもあった。

けれど、変わらないものもあった。


「約束、忘れてないよ。」


息を切らしながら、ユウキが笑った。

ソラも笑った。


空には、真っ白な雲がいくつも浮かんでいる。

かたちを変えながら、どこまでも、どこまでも流れていく。


ふたりの夢も、きっと、

これからも流れ続けるだろう。


雲の上の未来へ向かって。☁️


📖【この話に登場した文様】

■ 雲文様(くももんよう)


由来:空にたなびく雲の形を図案化したもの


意味:変化、流れ、自由、未来への希望

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る