🍂【秋の章】

第13話 「紅葉文様 🍁 紅に染まる頃」

「紅葉文様に込めたのは、色づき、散りゆく美しさと、変わりゆく強さ。」 🍁


秋、山あいの学校。

窓の外には、一面の紅葉が広がっていた。


赤、橙、黄金色。

季節は確かに、次の扉を開こうとしている。


卒業を間近に控えた教室で、ナオは静かに机に向かっていた。

周りの友人たちは、進路の話に花を咲かせている。


――だけど、ナオには、まだ決めきれないことがあった。


故郷に残るか、外の世界へ飛び出すか。


どちらにも、手放しがたい思いがある。


「迷ってるの?」


声をかけたのは、クラスメートのユイだった。

ユイは、小さな紅葉の模様が入ったハンカチを手にしていた。


「これ、母さんがくれたんだ。」

「……きれいだね。」


「うん。

母さんが言ってたよ。

『紅葉は、色づいて散るからこそ、きれいなんだ』って。」


ナオは、ハンカチの中の紅葉を見つめた。

一葉一葉が、命の限りに輝いている。


「変わるって、怖いけど……。

でも、変わらないままだと、枯れちゃうのかもしれないね。」


ユイの言葉に、ナオは小さく笑った。

そうだ。

踏み出すことは、別れを意味するかもしれない。

でも、それは、成長の証でもある。


ナオは窓の外に目を向けた。


風に吹かれた紅葉が、はらり、はらりと舞い落ちる。

空は高く、どこまでも澄んでいた。


「……行ってみようかな。」


ナオは呟いた。

怖くてもいい。

泣いてもいい。


それでも、自分の足で、歩き出したいと思った。


教室のざわめきの中、

一枚の紅葉がそっと窓辺に舞い降りた。🍁


それはまるで、未来へ続く道しるべのようだった。


📖【この話に登場した文様】

■ 紅葉文様(もみじもんよう)


由来:秋に色づき散る楓や紅葉をモチーフにした文様


意味:成長、変化、美しさの儚さ、前向きな別れ

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