存在認識障害症候群 (そんざいにんしきしょうがいしょうこうぐん、英：Existence Recognition Deficiency Syndrome、略：ERDS)

[概要]

　存在認識障害症候群は、罹患者を記憶する人物に対して、罹患者に関する記憶の選択的低下を引き起こすことを特徴とする、進行性対人認知障害症候群である。

　日本国内においては、本症候群はしばしば虚構症候群と通称される[1]。

　虚構症候群は、一般的な神経疾患や精神疾患と異なり、患者自身の認知機能には直接的な障害を及ぼさない。罹患者の主観的自己意識およびエピソード記憶は温存される一方、周囲の他者による認識機能が進行的に低下し、最終的に「罹患者に対する一切の記憶」が失われる。

　発症頻度は極めて低く、先進国において罹患者は100万から200万に一人と推定されている。罹患者の9割以上は10代～20代で初期症状を呈し、男女差は認められない。

　感染性を有する新興疾患と推定されており、発症機構には異常タンパク質説およびミクロ認知連鎖異常仮説などが挙げられているが、20██年現在、完全な病態解明には至っていない。

　200█年に日本国内にて発生した女性タレント発症事件を契機に、社会的認知が急速に拡大し、20██年には厚生労働省により指定難病第██号として認定された[2][3]。本症は、医療のみならず、法制度、社会構造、倫理学にまで波及する複合的影響を持つとされている。

[経過分類]

　虚構症候群の進行は通常、以下の5段階に分類される[4]。個体差は大きく、発症から終末期に至るまでの期間は平均して8〜10年とされているが、数年以内に急速に進行する例も報告されている[5]。

第0期（潜伏期）：自覚症状は認められない。罹患者の存在に関する記憶の異常は周囲の人々においても確認されない段階。

第Ⅰ期（初期消失期）：罹患者に関する記憶のうち、最古の情報に対して認識障害が生じる。罹患者に関する幼少期の記憶が家族や周囲から失われる事例が報告されている。この段階で異常に気づき、早期診断に至る場合が多い。

第Ⅱ期（進行消失期）：最古から近年に関する認識障害が急速に進行する。とくに同居する家族間で認知不一致が生じ、親族ではなく知人と誤認されるケースが増加する。罹患者が家族と同居している場合、「知人が勝手に居着いている」といった警察への通報が起こり、発覚するケースが多い[6]。

第Ⅲ期（孤立期）：直近の記憶が消失する段階。罹患者は周囲との関係性が崩壊し、会話や生活上の接触において重大な齟齬が生じる。周囲への影響を考慮し、本人の意思にかかわらず、強制的に虚構影響防止措置が実行される[7]。

第Ⅳ期（終末期）：罹患者に関する記憶が一日単位で消失する段階。具体的には、周囲個体が睡眠に入ることで、罹患者に関する直近の記憶が完全に消去される。罹患者は日々の人間関係を維持することができず、虚構影響防止措置による生活支援と観察が行われる。第Ⅳ期進行後1年以内における罹患者の死亡率は90％を超えており、主な死因は自死によるものである[8]。