暁光が雲をかき分け、

鋭く冷たい光線がアカディア市中央広場を斜めに貫いた。

セレス王国の心臓——

かつて連邦による援助のもと、無理やり文明の仮面を被せられたこの首都は、

霧と寒風に包まれ、

今や眠れる獣のように、

鋭い刃によって目覚めようとしていた。

________________________________________

王宮を戴く山城は高く聳え立ち、

白い石で築かれた宮殿は、暁の光に銀の輝きを帯び、

硬質で冷ややかだった。

それは、幾度もの戦火と陰謀に鍛え上げられた氷の結晶のようだ。

山城の麓からは、黒曜石を敷き詰めた中央大通りが

王宮の正門からまっすぐ広場へ伸び、

まるで凍った黒い河となり、

王権と民衆とを容赦なく隔てている。

今日、

ヘリオス連邦の駐留軍がここで建都十周年の祝典を行う。

表向きは栄光の祭典。

だが、すでに荒廃したこの地にとって、

それは支配された自由と奪われた運命への

冷たく悲しい弔いでしかなかった。

________________________________________

広場の設営はすでに完了していた。

赤い絹布が無骨な石柱の間に張り渡され、

栄誉を象徴する連邦の六翼金鷲とセレスの蒼銀双剣の旗が

並び立ち、

冷たい風に打たれて、鋭くはためく。

華やかに作られた観覧台は、

白地に金装飾で無理やりヘリオス流の美意識と権威を誇示していた。

王宮階段には兵士たちが整列し、

漆黒のヘリオス制式鎧をまとい、

胸には六翼金鷲の紋章を焼き付けている。

彼らは無表情のまま、

まるで移動する鋼鉄の墓標のようだった。

鋼槍の林立する中、

冷たい光が霧を切り裂き、

誰がこの都市の真の支配者であるかを無言で示していた。

________________________________________

広場の外縁では、セレスの市民たちが強制的に集められていた。

彼らは手に小さな連邦旗を振り、

顔にはぎこちない、作り物めいた笑みを浮かべている。

露天商たちは古びた手押し車を引き、警備兵の目を盗みながら

焼肉やキャラメル果物、粗末なアクセサリーを売り歩いていた。

空気は甘ったるい油煙と石油の匂いが入り混じり、

鼻をつくような不快さを放っていた。

賑わいに見せかけたもの——

それは、

化粧を施された屍に過ぎない。

伏し目がちな市民たちの奥底に潜むものは、

ただ、屈辱と抑圧だけだった。

________________________________________

その雑踏の中——

一人の銀面の衛兵が、静かに歩みを進めていた。

歩みは遅く、

一挙一動が自然で無駄がない。

ただの無名の一兵卒にしか見えない。

だが、

銀色の仮面の下——

イレイン・オースティンの眼差しは、鋭い刃のようだった。

広場と大通りを素早く見渡し、

頭の中で一枚の戦場地図を描き上げていた。

彼は——

セレス王国最年少の将軍にして、

かつて新王朝を担う希望の星。

今や、叛乱の剣を取る者だった。

________________________________________

蒼穹会の戦士たちは、すでに持ち場についていた。

• 工業区で密かに製造された爆裂薬は、

主幹道の要所に仕掛けられ、

• 商業区周辺には市民に紛れた義勇兵たちが、

短剣、火器、戦斧を忍ばせ、

• 王宮内では、寝返った衛兵たちが

内部通信の遮断を待っていた。

• 東の城境では、古びたセレス伝統鎧を纏った重騎兵の小隊が

静かに潜んでいた。

蜂起は、

もはや夢物語ではない。

この広場の上で、

一人ひとりの心臓の鼓動と共に、

火花が爆ぜるのを待っていた。

________________________________________

王宮の階段上、

ヘリオス連邦駐屯司令官——アルベルト・カサノヴァ大将が

銀の刺繍が施された黒いマントを翻し、

黄金の司令杖を手に、演壇に上った。

彼は、広場を一望し、

征服者らしい傲慢な微笑みを浮かべた。

背後には、

高く掲げられた連邦旗が、

悲しきこの都市を見下ろしていた。

カサノヴァは杖を掲げ、

甲高く響く声で叫んだ。

「今日という日は——

アカディアの栄光の日だ！

ヘリオス連邦こそが、

貴様らを蛮地から文明へ導いたのだ！」

ぱらぱらと弱々しい拍手が広がる。

だがほとんどの者はうつむき、

形だけ手を叩いていた。

祝祭のリズムは、

冷たく、死んでいた。

________________________________________

イレインはそれを聞きながら、

右手の指で剣の柄を軽く叩いていた。

一拍一拍、

彼の心臓の鼓動と同期していた。

冷静に、精密に、揺るぎなく。

________________________________________

耳の奥、隠しチップから囁き声が流れた。

【南地区第三区、爆破班、配置完了。】

【西工業区北工場、内通者が哨所掌握。】

【王宮近衛隊第三小隊、C1プロトコルに切替。】

蒼穹会の巨大な反乱機構が、

静かに、しかし確実に動き出していた。

全ては、一つの号令を待っている。

________________________________________

イレインは静かに息を整え、

目を細めた。

低く命じる。

「——始めろ。」

________________________________________

次の瞬間——

轟音！

黒曜石の大通りが、あちこちで爆裂した。

地面が破れ、黒い破片が飛び散り、

列をなす連邦兵士たちを氷の刃のように切り裂いた！

土煙、炎、砕けた石が天を覆い、

最初の悲鳴と怒号が混ざり合った！

________________________________________

群衆の中から、

蜂起者たちが一斉に武器を抜いた！

火器を手にする者、

祖先の残した長剣と大槌を握る者、

そして鋭い戦斧を振るう者！

鉄と火、伝統と革新が、

この瞬間、

激流のように交差した！

彼らは連邦兵に襲いかかり、

銃弾と剣戟の中、

血路を切り開いた！

________________________________________

王宮の階段上——

カサノヴァ大将は顔色を変え、

剣を抜き、怒鳴った。

「裏切り者ども！　陣形を維持しろ！　広場を制圧しろ！！」

だがその叫びも、

爆発と怒声の嵐にかき消された。

________________________________________

イレインは剣を抜き、

群衆を割って突進した。

黒いマントが烈風に翻る。

彼は剣を振るい、

立ち塞がる連邦兵をなぎ倒しながら、

黒い稲妻のように

王宮階段へと駆け上がった！

背後には、次々と蜂起者たちが続く。

彼らはぼろ布のような服と、ばらばらの武器しか持たないが、

その歩みは奔流のように力強かった。

偽りに塗られた都市を、

怒りの奔流が押し流していった！

________________________________________

最初の血が、大地に滴る。

それはまるで、神々の託宣だった。

次いで二滴、三滴——

広場全体が血の海と化していく！

________________________________________

イレインは、

血に濡れた長剣を高く掲げ、

王宮山城の頂を指し示した。

火と埃の中で、

彼の誓いは低く、しかし鮮明に——

戦場を震わせた。

「アカディアよ——今日こそ、頭を垂れるな！！！」