Episode 039 その闇を越えた兆しに。


 ――微かな足音が響く。



 そこは誰もいない筈の空間に、リンダの耳から、その音は忍び寄ってくる。


 振り返ると、そこには黒い影が立っていた。フードを被ったパーカーの……女子のシルエット。その姿を見た瞬間、胸の奥が焼けるように熱くなるのを感じた。


 彼女は微笑みながら、一言呟く。


旧号きゅうごう……」


 と、僕を呼んでいた。


 その声は、僕を凍りつかせるには充分だった。


「……君は誰なんだ?」


 声を出そうとしても、喉の奥が震えるだけだった。今僕は、リンダの肉体を支配しているような形。リンダは眠っている。深い眠りに……だからこそ僕は、フードを被ったパーカーの君と向き合おうと覚悟をするも、君は答えずに後ろを向き、闇に溶けていった。


 くれない初子はつこが手に取ったメモ帳の中には、かつて僕が残した言葉が書かれていた。それを読む彼女の目には、深い悲しみと決意が混ざっていた。その場面が今も繰り返され……



〝僕が、本当に救いたかったのは、誰だったんだ?〟



 僕自身が抱える疑問が、セゾン号を操るアンたちの未来へのヒントになると願った。


 そして最後に、リンダが夢の中で見た光景を、僕は目の当たりにした。


 ――それは、青い光で包まれた黒い影の涙だった。真実は隠れているけど、きっと君たちは見つけられる……その言葉がリンダの心に響き、目覚めた彼女の瞳には、新たな力が宿っていた。その青い光は、これからの道を示す灯火になるだろう……


 そして、僕の役目はまだ終わっていない。

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君と創作少女シリーズ! 大創 淳 @jun-0824

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