Episode 026 孤独と孤立するその思い。


 ――相談にならないコミュニケーション。


 阻むものは言葉の壁。現実にはそうだった。アンは海外の人で通じない言葉。



 リンダとは会話ができる。リンダは片言の日本語ならできるけど……


『アンはどうなの?』と、思わず尋ねていた。


 誰に対して? そんなのは関係なく、僕は心の声が漏れていた。


『私と同じ。フランス語か英語。日本語はほんの少し。簡単な言葉くらい……』


 と、リンダは答えた。


 それもその筈。僕の声はリンダにしか届かないのだから。改めて思う。僕はもう姿形がない存在。魂だけがリンダの脳に住んでいる。偶にだけど、リンダの身体を動かすことができることがある……あ、これは内緒だけど、その時はリンダが眠っている時だけだ。


『じゃあ、その時は何してるってわけ?』


 と、とある効果音と共に、リンダの声が聞こえてきた。


『ま、まあ、色々とね、リンダの観察を』


 しどろもどろ? そんな感じの答えになっていたから、


『それ不公平だよ。旧号きゅうごうはそれができるけど、私にはそれができないの。パートナーのこと知りたいのは解るけど、私だって同じ気持ちだから。だって、私は……』



〝旧号のこと、何も知らないから〟



 僕は驚いた。何故なら、僕は只々女の子のことに興味があっただけだから。リンダがそこまで思っているとは思わなかったから……彼女は僕の思っている以上に、その……


『ごめん、何か』


 そうしか言葉にならなかった。彼女が真面目に向き合っているから。


『いずれは君の物語も創りたいから』と、その一言を、彼女は僕の印象に残した。

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