Episode 019 サラサラと、ハラハラと。


 ――未確認飛行物体にも等しい敵が、目に前に立ちはだかっている。



 アンは困惑した。


 なぜ攻撃してきたのか? なぜ敵と認識しているのかも?


 なぜを繰り返す猶予も与えられないまま、戦闘は激しさを増した。水面を滑るように迫ってくる、鳥足にミサイルポットを搭載した敵は、我が機体の腹部を蹴った。


 衝撃は、身体を揺らす程……


 骨がバラバラに砕けそうなくらいに……


 コクピットが腹部にあるため、ダメージは致命的……と思われたのだけど、意外と持ち堪えた。従ってアンは無事。眩暈は起こしたものの、戦闘は続行可能。でもそれ以上の疑問が彼女を包む。モーターボートを楽しむため、ここを訪れただけなのに……


 なぜ戦うのか?


 それにセゾン号が変形するなんて知らなかったこと。でも今は『やらなきゃやられる』との思いだけ。――すると我が機体……人型形態となったセゾン号が、指先を青白く光らせた。それが光の刃のように敵を両断した。上から下へ。その途端、爆発した。


 フーッと、深い息を吐くアン。


 そこにカラフルなモーターボートが三隻、現れた。


「大丈夫?」と女性の声。明らかにアンに声を掛けていた。そこから展開する物語……


 書き上げた。


 ちゃんとした漫画となって。リンダはペンを持って、この物語の始まりを描いた。


 その場所は『セゾンの館』


 そしてリンダの部屋の中。改めてみると、設備は揃っている。Gペンやケント紙などの道具に、僕は心が躍っていた。それから赤いラジカセまであるのだから。そこで思ったことだけど、音楽を編集できたのなら、よりイメージに近づくのではないかと。そこから広がる映像化への想像。ずっと未来には、映画を作る設備が個人でできるのではと思った。



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