第12話 焼き機を作る予定が

 話合いを終えた翌日、またナーノと二人で西地区のごみ処理前倉庫に来たゴンは素材を集めていた。


 これからナーノに頑張って貰って色々と屋台用の焼き機(鉄板など)を作って貰う為だ。


「ゴン、次は何を作れば良いの? どんどん作っちゃうよー!!」


 ナーノが張り切っている。昨日からベビーカステラに沼ったナーノは作ってくれたらベビーカステラを上げるとゴンに言われて張り切っていたのだ。


「ナーノ、魔力は大丈夫かな? それなら次はコレを作って欲しいんだ」


 そう言ってゴンが差し出したのは大きさの異なるスーパーボール各種である。ゴムで出来た弾むボールだ。


「これなあに?」


「これはスーパーボールって言ってね。見ててねナーノ」


 そう言ってゴンはスーパーボールを地面に放り投げて自分の所に跳ねて戻ってくるのを見せた。


「わっ!? すっごい跳ねるんだねっ!! 私もやってみたい!!」


 そう言うナーノに少し小さめのスーパーボールを手渡すゴン。


「軽くこうやって投げれば戻ってくるからね」


 力いっぱい投げたりしないように注意するゴン。当たっても痛いだけで済むがそれでも危険は少ない方が良いのでそう注意する。 


 ナーノはゴンの注意を聞いて慎重に投げ、自分の場所に戻ってきて嬉しそうにしている。そこでハッと気がついたように


「コレを作るの、ゴン?」


 と聞いてきたので頷いて肯定するゴン。


「こんな風に色を付けたり大きさを変えたり出来るかな?」


 そうゴンが聞くとナーノは職を意識してスーパーボールを持つ。


「うん、出来るみたいゴン。でもこれまで集めた素材じゃ出来ないよ。違う素材がいるみたい」


 ナーノから素材を聞いてゴンは管理人のガタックにナーノが言った素材のくずが有りそうな倉庫を聞いてみた。


「ゴンさん、それでしたら隣の倉庫にありやすよ」


 ガタックが教えてくれたので隣の倉庫に向かったゴンとナーノ。そこには溢れかえるほどのスライムたちの成れの果てがあった……


「うわ〜、何だか……」

「新人さんが剥いだのかな〜? ビリビリだねゴン」 


 このごみ処理前のスライムの成れの果てはごみ処理をしてくれているスライムとは違い、街の外で人を見れば襲ってくる野良スライムである。


 ごみ処理をしてくれているスライムはテイマー職の人がテイムしているので人を襲うことも無く、増殖もしない。

 で、ここにあるのは主に新人が素材の剥ぎ取りに失敗した物なのだ。買取りはしてもらえないのでごみ処理場が出来るまでは、素材ハンターたちが街の外に放り投げていたらしい。


 無臭なので問題ないと思われたのだが、それを目当てに他のスライムが増えたので、ちゃんと処理するようにと領主ダイ・ミョージンから通達があったのが今より二十五年前の事らしい。


 専門のテイマー職を領主の名の元に雇入れ、その人にスライムをテイムして貰ってごみ処理をしているのだが、処理速度よりもたまるほうが早いので頭を悩ませているとも聞いていた。


 ゴンは少しでもこのごみ倉庫に貯められたごみが減れば多少の助けにはなるかと思い、こうしてごみから素材を見つけているのだ。焼け石に水みたいな感じだが、ゴンには考えている事があった。これから先ナーノだけに頼るのではなく、他の人の中にもナーノと同じとは行かなくても物を作る職の人がいるのではないかと思っているのだ。


 もしもそんな人がいるのならば、その人にも物作りに携わって貰うつもりでいた。もちろんだが作って貰ったら給金もちゃんと払うつもりでいる。


「ゴン、どう? あるかな?」


 ナーノはスーパーボールを作ってみたいので早く早くと急かしてくる。


「ちょっと待ってね、ナーノ。使えそうなのを選んで数を揃えるから。そしたら色んな大きさや色のを作れるからね」

  

 いそがすナーノにゴンは落ち着くようにそう声をかけて素材を集めだす。今日は本当はスーパーボールを作るのではなく焼きそばを焼くための鉄板などをお願いするつもりで、既に焼きそば用の鉄板は出来ていた。

 が、ゴンがつい出してしまったスーパーボールに興味を引かれてしまったナーノにたこ焼き用の鉄板やたい焼き用の焼き機を作ってくれとは言い辛い雰囲気なので、ゴンは今日はこれで良いやと思いスーパーボール用の素材を沢山みつけようと頑張っているのだ。


 それから小一時間かけて素材を集めたゴンはナーノに言う。


「これぐらいあればナーノの今の魔力なら二百個ぐらい出来ると思うよ」


「うん、頑張るね、ゴン!!」


 それからナーノの無双が始まった。


 先ず初めに大きめのスーパーボールを二十個作り、その次に一回り小さいスーパーボールを五十個作り、先ほどゴンが出したのと同じ大きさのスーパーボールを百三十個作り出した。

 全部で二百個である。余った素材を異空庫に入れようとしたゴンだったがそこでナーノが


「ゴン、まだ魔力はあるからもう少し作るね!」


 そう言って大きめのスーパーボールを追加で五十個に一回り小さいスーパーボールも同じく五十個、そして一番小さいスーパーボールを百個作り、ゴンが見つけた素材を全て使い切ったのだった。


「はあ〜、流石に魔力がもう無いよ〜」


 ゴンは思った……

『今日はこれで終わりじゃないつもりだったけど…… まあ頑張ってくれたから良いか。よし、ナーノの為にベビーカステラを焼こう!!』


「ナーノ、頑張ってくれて有難う! それじゃ小屋に戻ってベビーカステラを焼くよ! いっぱい焼くから食べてね」


「本当? ヤッターッ!!」 


 無邪気に喜ぶナーノを見てゴンはこれで良かったんだと思いながらナーノと二人で拠点の小屋へと向かった。


 小屋に戻りさっそくベビーカステラを焼き出すゴン。しかし出来たそばからナーノが食べていく……


『その小さな体に別腹とはいえ何個入るんだい、ナーノ?』


 心の中で疑問に思うが口に出してはナーノにこう言う。


「ナーノ、あんまり食べ過ぎると家でご飯が入らなくなるよ」


 しかしナーノの返事は


「大丈夫だよ、ゴン! だってご飯とは別腹だもん!」


 という返事であった。


 既に五十個を超え、七十五個目を食べているナーノ。『いや、これ結構お腹に溜まるよ?』とも思うがゴンがその言葉を口にする事はない。


 喜んで笑顔で食べてくれるナーノを見てると前世でテキ屋をしてた時に買いに来てくれていた子供たちの笑顔が浮かびホッコリしてしまうからだった。


「ゴン、百個で良いからね。だから後二十五個ね。あ、でもお母さんにお土産として一袋(二十五個)お願い!」


「分かったよナーノ。うちもお母さんにお土産として焼いて帰ろう」


 こうして焼きそば用の鉄板だけ作って今日は帰る事にした二人。小屋から出て家路へ向かおうとしたら、コサムとネイ夫婦にヒック、レーク、タンメ、イハリの六人が揃って待っていた。


「ゴンの兄貴、俺たちはスーバの親っさんと話をして明日からゴンの兄貴とナーノの姉御に着いていく事にしたんだ。レークとタンメは明日はごみ収集の仕事があるから昼からの参加になるんだけど、俺とイハリ、それにコサムさんとネイさんは朝から兄貴たちに適性を見て貰いたいと思ってるんだ。良いかな兄貴?」


「えっ!? 二日後って話だったけど良いのヒックさん? それに他の皆さんも?」


「ゴンさん、私やネイは既にお話をいただいておりましたしこれから先もゴンさんのやる事に着いて行きます。ヒックたちは豊穣祭でゴンさんのお手伝いをしてとても楽しかったようなのです。これまでは仕事は生きる為にしていただけでしたが、やり甲斐を感じたと。それは私もネイも同じ気持ちでしたので、ヒックたちがその気ならばと一緒にやッていこうと話をしました」


 既にゴンと契約をしたコサムがそう言ってヒックたちの気持ちを代弁してくれた。


「分かりました。それじゃ、明日は皆さん朝九時にこの小屋に来て下さい。皆さんの適性を見ましょう。レークさんとタンメさんもお昼から見させて下さい」


「「はい!! ゴンの兄貴!!」」


 明日こそはナーノにまだ作ってない焼き機を作って貰おうと思っていたがどうやら少し先延ばしにする必要が出たようだ。


 それでもゴンはこうしてやり甲斐を感じたと言われて嬉しい思いをしていたのだった。



 

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