第18話 秘密の贈り物

 ミコトと別れ少し経った後、パン屋のガレットに戻ったシアとライア。マリーがお店の奥でクッキーを袋に包む姿を見てライアが落ちつきなくソワソワとお店の中を動いている

「はい、おまたせ。出来たてのクッキーだよ」

「美味しそう!」

 透明な小さな袋に数枚入ったクッキーをライアが三つ受けとると、嬉しそうに透明な袋の中にあるクッキーを見つめる。シアもライアが持つクッキーよりも少し茶色いクッキーが入った透明な袋を三つマリーから受け取った

「あれ、こっちは?」

「サービスだよ。違いを感じて欲しいからね」

「でもこんなに食べたら夕御飯とか……」

「大丈夫、お菓子は別だからね」

 そう言いながらマリーがライアに目線を向ける。それに答えるようにライアが何度も頷く。それを見てシアが困ったように笑い、マリーもニコニコと微笑む。お店の奥で作業をしていたブランも出てきて

、三人の会話を聞きながらふとお店の入り口側にある大きな窓を見ると、ちょうどミコトがお店の扉を開けようとしていた


「お帰り、ミコト」

 カランとお店の扉についていた鈴でミコトが来たことに気づいたシアが声をかける。ライアが手を振りミコトを呼び、マリーもミコトを見てニコリと微微笑む

「ただいま。クッキーもう出来たの?」

「うん、二つも貰ったよ」

「美味しそう」

 シアとライアが持つクッキーの袋をミコトも一つずつもらい、三人でクッキーを見比べ楽しむ。その様子を見ていたマリーが窓に雨粒がついているのに気づいた

「三人とも、また雨降る前に帰りなさい」

「そうだね、帰ろっか」

 シアも窓をから外を見る。ガレットに来た時よりも雲が増えていた

「おばさん、またね」

「またね」

 シアとライアがマリーとブランに手を振り入り口の方に歩き出す。一番最後にミコトがお店から出ようとした時、マリーがミコトに手招きをした

「ミコト、ちょっといい?」

 マリーに呼ばれて、お店の扉に手を掛けていたミコトが振り向くと、ブランがマリーに一口サイズのパンが数個入った袋を渡していた

「これ、ミコトにあげる」

 マリーがミコトにパンを差し出す。そのパンを受け取り、袋の中を見たミコトが嬉しそうに微笑む

「このパン……」

「おや、いつもはすぐに忘れるのに、覚えていたのかい?」

「うん、マリーおばさんにはじめて会った日に貰ったチョコ入りのパンでしょ?」

「そう。二人には内緒でもらっておきなさい」

「うん、ありがとう」

 お礼を言いパンの袋をぎゅっと抱き締めると、袋の姿がなくなり、ミコトが持つのはクッキーが入った袋二つになると、また扉を開け、お店の外でミコトを待つシアとライアに手を振り駆け寄る

「マリーおばさんと、なんの話をしていたの?」

「んーと、ライアについて少しだけ」

 シアの質問にエヘヘと笑って誤魔化し空を見ると、雲が太陽を隠し、少し町が暗くなっていた

「マリーおばさんの言う通り、雨が降る前に急いで帰ろ」

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