第13話 誰かの代わりに

「これ本当にライアが作ったの?ミコトの実験成功じゃなくて?」

「うーん……。あの爆発は大失敗だと思うんだけどなぁ……」

 机に置かれたクッキーを見つめヒソヒソと話す二人。その背後でライアがクッキーが食べたくてウロウロと二人の背後を交互に行き来している

「もう食べていい?」

「まだもうちょっと待って」

 シアがクッキーに手を伸ばそうとしているライアの腕をつかんで止める。食べれずしょんぼりと落ち込むライアの隣でミコトが使ったであろう道具を確認している

「これ、食べれると思う?」

「見た感じ必要最低限で作ったみたいだから、大丈夫とは思うけど」

「じゃあ、ライアが食べる前にミコトが先に食べてみて」

「えー……」

 ライアが食べる予定だったクッキーをミコトに渡す。渡す様子を見たライアがショックを受けた顔で手渡されたクッキーを見ている


「……いただきます」

 ライアがミコトをずっと見つめる中、意を決してクッキーを食べようとしたミコト。口に運ぼうと手を動かしたその瞬間、部屋の中にふわりとそよ風が吹いた。そのそよ風に気を取られ一瞬目を閉じた。すぐに風は止みそーっと目を開くとさっきまで持っていたはずのクッキーが無くなった

「あれ?クッキーは?」

 慌てて辺りを見渡す。ライアもキョロキョロと部屋を見渡し探す。すると、フルールがライアが作ったクッキーを全部咥えて窓辺で立っていた

「えっ、フルール……なんで?」

 ミコトがフルールに声をかける。はじめてフルールを見たライアが驚いてシアの服をつかみ、背中に隠れた

「そのクッキー返して」

 フルールに手を伸ばし取り返そうとするが、フルールがバサリと大きく羽根を広げ、そよ風をなびかせ三人の背後に回るように飛び立った

「いなくなっちゃった……」

 すぐに振り向いてフルールを探すが、ヒラヒラと舞う羽根を残し部屋から消えていた

「大丈夫。マリーおばさんに頼んでまたクッキーを作ってもらおう」

 フルールにクッキーを奪われしょんぼりうつ向くライアの頭を撫でるミコト。シアはフルールがいた窓を見て外の様子を見ると、まだ雨風が強く止みそうになかった



「あら、フルール」

 カメリアと休憩をしていたアルトがカメリアの背後に急に現れぐるりと一周したフルールに気づいて声をかける。カメリアが少し背後に目線を向けると、フルールが二人の前まで移動すると、テーブル置いていた二人のティーカップのソーサーにライアが作ったクッキーを置いた

「その美味しそうなクッキーはどこから?」

 アルトがそう言うと、カメリアがクッキーを一枚手に取り、迷い無くそのクッキーを少しかじる。しばらく味わうようにクッキーを見つめるとフフッと嬉しそうに笑った

「よく出来ているわ。次に作るおやつが楽しみね」

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