第11話 静けさよりも騒がしい朝

 その頃、学園の職員室では急に休校になったせいで騒がしく動く職員達いる中、カメリアは朝から深いため息をつき、机の上に積まれた資料に目を通していた

「機嫌が悪そうね」

 そう言いながらクスクスと笑うアルトの声がカメリアの側に聞こえて持っていた資料を机にバサッと放り投げた

「ええ、さすがに飲み過ぎたみたいね」

「あらそう。弱くなったのね」

 カメリアの返事に嬉しそうにまたアルトが笑い机にもたれる。窓にはまだ強い雨風が吹き荒れていた

「今日の学園はいつもより静かね」

「休校になったからね。学園にいる生徒は寮にいる子だけだし、仕事が弾むわ」

「そうね」

 カメリアと会話をしながら机に積まれた資料を一枚手に取り机に背もたれると、廊下からバタバタと騒がしい足音が聞こえてきた


「二人とも早く。来るのが遅いよ」

「ちょっと待って!」

 ミコトが職員室の前を走り、その後をシアとライアが追いかけていく。大声で叫ぶ三人を職員室にいた教師が注意する。職員室から遠く聞こえてくるミコトの適当な返事に、職員がさらに大きな声で注意をする。ミコト達の声でさっきまでの静けさは急になくなり、アルトがクスクスと嬉しそうに笑う

「やっぱり、この学園は騒がしいのが似合うわね」

「そうね」

 と、カメリアがアルトに返事をすると、二人の間にフルールが翼を広げ現れた

「いってらっしゃい。お昼には一度戻ってきてね」

 カメリアがフルールにそう言うと、大きな翼をバサリと動かす。机に積まれた資料が舞い、姿を消した




「これとーこれと、これね」

 その頃、実験室に着いたミコトがガチャガチャと戸棚から色々な容器を取り出し、ライアに手渡していく。カメリアが昨日、片付けた部屋はあっという間に部屋中が散らかりシアが呆れたようにため息をつく

「ライア、落とさないように気をつけて」

 両手いっぱいに持たされた容器を恐る恐る机まで運ぶライアにシアが心配そうに声をかける。一個ずつ容器を机に置き終えると、二人同時にふぅ。と安堵のため息をついた

「ねえシア、あの近くにあるそれも取って!」

 シアの側にある戸棚を指差す。戸棚にある調合に使う道具を何個か取るように指示をする。シアも両手いっぱいに道具を持ち、机に調合用の道具を置いた

「本当に使うの?」

「うん、もちろん」

「怒られても知らないよ」

「大丈夫、ライアも見守っているから、ねっ」

 ミコトの隣で道具を不思議そうに見ているライアに声をかける。急に話しかけられ驚きつつもうんと頷き返事をする。それを見てミコトはニコニコと嬉しそうに笑い、ライアが持ってきた容器を手に取った

「じゃあ、カメリア先生に見つかって怒られる前に終わらせちゃおう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る