第2話 ルームメイトとの出会い

 「はっ私としたことが寝落ちしてしまった」

 とそこで床のあまりの冷たさに気づく。そして足には足枷が着いていた

 「あれ?フローリングに絨毯のある部屋だったのにコンクリートの床ってどういうこと?てか、この足枷何?」

 「移動してくれたのかな?にしては、部屋としての体裁が整ってないけど...この足枷は最近若い女の子が首に巻いてるアクセサリみたいなものかな?んー...」

 そうすると横から声がかかった「おはよう新しい猫さん」

 そこに居たのはショートヘアーの一糸まとわぬ姿の女性がいた。そして何よりも目立つのがたくさんの傷に根性焼きの跡。見惚れて見つめたくなるほどとても綺麗な女性のはずなのにあまりの痛々しさに目をそらさざるを得ない

「ここは?」

「あなたあのジミーとかいう佐藤翔太に連れてこられたんでしょ?」

 「え、えぇ、お金ないから泊めてもらおうと思って...」

 「それは災難だったわね」

 やはり私はまだ事態を飲み込むことができないでいてえ、えっと繰り返すばかりでいる。そんな私に彼女は一言

「17:50分ねあと10分もすれば時期にわかるわ」

 そう言って彼女は目を閉じた。

 それでも事態が飲み込めていない私は唯一情報を持っているであろう彼女に質問を繰り返すばかりだが彼女はもう話すことは無いというように無視をするだけであった。

 彼女の言っていた10分後18時になる30秒前

 この部屋の唯一の特徴である扉その奥から「ふんふふんふん」と鼻歌混じりにカツカツカツと高い足音と鍵を振り回してるような金属の擦れる音が聞こえてきた。

 ドアを開けて入ってきたのはジミーこと翔太だった。

 私は咄嗟に翔太に質問した

「ねぇここはどこ?何がどうなってるの?」

 すると翔太は返事の代わりに蹴りを返してきた。

 「おい何、猫が人様の言葉を話してんだよにゃあだろうがよォ」さらに追撃でもう1発。

 「おら返事はどうした?」また1発

 私は訳も分からずに「は、はい分かりました」

 と言ったらまた1発

「お前はほんとに馬鹿な猫なんだな返事はにゃあだろうが」

 「にゃ、にゃあ」

 「よしよしやりゃあできんじゃん」

 そう言いながら彼は撫でてきた。

 「てかお前猫なのになんで服きてんの?」彼はおもむろにそう言いながら服をさいてきた。

 私は反射的に「何するのよって」言ってしまったら彼は仏の顔も三度までと呟き「ちょっと厳しい躾が必要だなぁ」とボヤきながら部屋を出ていった。

 彼が持ってきたのは鎖だったその先は二股に別れており枷が着いている。

 どう見ても手か足を拘束するために見えるそれに恐怖が増していく。

 彼は慣れた手つきですいすいと枷を私の両手にはめた。その後足枷を外され一言

「立て」

 服を簡単に裂くほどの力のある彼、何をされるか分からない私は怖くて従うしか無かった。

 そしてドアがある方とは反対側私が背を向けていた壁に連れていかれた。

 そこには金具の着いた1本の棒が高いところに刺さっていた。

 彼はそこに鎖をどんどんぐるぐる巻いていき、私が背伸びを始めたところで解けないように巻き金具に繋げた。

 さっき服を無理やり裂かれた状態下着までは裂けてないまでも彼氏がいた経験も無い私にはかなり恥ずかしい状況。手を上に吊るされてるから隠すことも許されない。羞恥心に押しつぶされそう。そして何より腕に金属がくい込んで痛い。

 ただ、それを見ている彼の瞳には性的に興奮してるような感覚もなくむしろ興味がなさそう。私の今の状態を確認すると部屋にいたもう1人を呼びつけた。

 「おいルナこっちに来い」

 にゃあと返事をしながら彼の傍によった美女は座っている彼の足元で猫のように丸くなった。

 そして彼は丸くなった美女の頭を撫でた。

 よく分からず半裸で吊るされる私とその目の前で裸の美女を撫でるという構図。これだけ聞いたら男の人は興奮するかもしれない。いやというかするはず、なのにやはり彼の目線にやらしい目付きなどは感じない。むしろ慈愛を感じるような気がした。撫でて満足したのか彼は何も言わずに出ていった。


 最初はとにかく腕が痛かったのだが今は、ただ、痺れと熱を感じるのみで痛いとは違う痛く感じ、ふくらはぎは吊りそうな感覚でつま先はひたすらに痛さと冷たさを訴えてくる。

 そこに先程ルナと呼ばれていた美女が話しかけてきた。

 「ここでは、とにかく猫のように徹しなさい。そうしないとあなたそのうち死ぬわよ」

 「よくわかんないけどいいから助けてよ」

 「嫌よそんなことしたら今度は私が罰を負うじゃない。しかも4回も警告されてたでしょ。いつもの彼を思うとよっぽど機嫌よかったのねかなり寛容だった方よ」

 「まぁ、私には何にもできないわ彼が戻ってくるまで頑張って」

 「ルナさん!わ、わかったから。せめてお願い話し相手になってあと、今の状況を教えて欲しい。何かで気を紛らわさないと無理もうほんとに腕がちぎれそうなんじゃないかってくらいしんどくて」

 「はぁ、そのくらいはいいわよ。あと凛よ」

 「え?なにが?」

 「私の名前。ルナは彼が勝手に猫の名前としてつけた名前。まぁ、彼の前ではルナだからどっちでもいいけどそれに彼の前で呼んだらそんなの猫じゃないでしょ?」

 「そ、それも確かにそうだね。ねぇこれ死んだりしない?なんかだんだん感覚がなくなってきてるような気がするんだけど」

 「さぁ、ずっとはさすがに死ぬんじゃない?ここは時計がないから時間の感覚なんて狂ってて当てにならないけどとりあえず彼が放置して昼寝して帰ってきた頃には腕だけが膨れ上がって脱臼している子はいたね」

 「あぁ、もうなんでそんな怖いこと言うのよ」

 「あなたが聞いたんでしょ」

 とそこでおもむろに扉が開き、彼が入ってきた。

 「おう調子はどうだ?」

 「にゃ、にゃあ」

 「お、ちゃんとわかったみたいだな、利口だな、今外してやるよ」

 彼が鎖を外した瞬間。吊りそうだった足は限界を迎えそのままその場に倒れ込む。足の裏はもう常にずっと痛いが、それ以上に腕が焼け付くように痛く痺れがすごい。

 冷えたからだを温めるためにだくことすら叶わないほど動かせない。

 ただ、私なもう猫彼の言うことを聞いてれば怖いことをされることは無いだろうと言い聞かせて。彼の一挙手一投足を見守った。

 私の目に映る恐怖の瞳に満足したのか彼は、餌の時間にするかと言ってドアを出ていきすぐ戻ってきた。

 彼の手に持っていたのは猫の写真が貼ってある袋とサプリと2枚のお皿だった。

彼は猫の写真の貼ってある袋に入っていたものをいれてその上にサプリをかけた。

 「ほら、飯の時間だ食え」

 お皿は床に直置き、箸やスプーンなんて道具はない。

 しかもどう見ても猫の写真が貼ってあるなんてキャットフード。猫になるってことを甘く考えてた。私に人権なんてもうないんだ....

 絶望しながら手でつまみ食べようとした瞬間蹴りが飛んできた。

 私ななんで?とパニックに陥りながら痛みに踞る。

「な、にゃあ」

 咄嗟になんでってでかかったがそれを阻止。

 視界の端に映ったのは凛が屈みながら猫のように口だけでご飯を食べていた。

 やっぱり私はまだ人間の感覚でいたんだよろけながらお皿に近寄り、口だけで食べ始めると彼は満足そうに頷いた。

 どうやら正解だったようだ。

 ただ、まずいとまでは行かないけど何コレキッツ

 味が強い訳では無いけど臭みとえぐみが強くて食べるのもつい。口の中の水分はどんどんなくなる。

 こんなん拷問だよ....

一生懸命食べていたらすぐに気づけてえらいぞと頭を撫でられた。

 その手にはなんだか温かさと優しさと酷く恐怖を孕んだ冷たさを感じる矛盾した手だった。

 (悔しいけど撫でるの上手くてちょっと気持ちい)

 彼は私の頭を撫でながら

 「よし、決めたお前の名前はメイな」

 私はもう完全に人ではなく猫になった瞬間だった。

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