僕だけが持つ《構造解析スキル》で世界を救う〜AI化東京で、僕は侵略者相手に神スキルで戦い勝利する〜
☆ほしい
第1話
──2040年、東京。
空には人工衛星が常に10機以上巡回し、交差点には無人車とドローンが秩序正しく行き交っている。コンビニで買った缶コーヒーにもAIが搭載され、天気の話くらいはしてくる時代。人間の生活は、情報と機械にやさしく包まれていた。
……その“はず”だった。
「なんか、今日の空……変じゃないか?」
そう呟いたのは、俺の後ろを歩いていたクラスメイトだったと思う。
朝の登校路。いつもの駅前、いつもの人通り。なのに、誰もがどこか妙に黙り込んでいた。
見上げると、そこには確かに“何か”が浮かんでいた。
空に──黒い穴のような、球体のような、説明不能の何かが。
「また……来たのか、スフィア」
俺の胸の奥がざわつく。
その存在を見た瞬間、心臓が勝手に脈打ち始めた。怖いわけじゃない。ただ、身体が本能的に反応している。
《スフィア》──それは、1年前のある日、突如として空に出現した“構造体”だ。
人間の科学でも魔法でも説明できず、誰も近づけず、ただ“存在している”だけの物体。
その日を境に、世界は変わった。いや、“変えられ始めた”。
「……おい、あれ……なんだよ」
前を歩いていたサラリーマン風の男が、路上で固まった。
その視線の先、交差点のど真ん中で“空気”が波打っていた。
歪む。たわむ。折り重なるように、そこが捻れた。
次の瞬間、“それ”が現れた。
──異形。
二足歩行に近いが、両腕は地面を這うほど長く、頭部は透き通った水晶のように光を反射している。
皮膚のようなものは見えない。ただ、“データの塊”を模したかのような構造。
「ゼ、ゼロスペシーズ……っ!」
誰かが叫んだ。
そう、それはスフィアの出現以降に現れるようになった“存在”。
地球の生命体ではない。生き物ですらない。
未知のデータ構造を持った異星存在──《ゼロスペシーズ》。
そして、これは夢でも映画でもない。
交差点の中央にいた老人が、最初に跳ね飛ばされた。
宙に浮くほどの衝撃。そのまま車道に転がっていく。
悲鳴。逃げ惑う群衆。俺の足は凍りついたように動かない。
だけど──
「たすけて……!」
耳に飛び込んできたのは、クラスメイトの女の子の叫びだった。
彼女の肩が、ゼロスペシーズの腕に掴まれていた。
「──っ!」
気がつけば、俺は走っていた。身体が勝手に動いていた。
拳を握る。だけど、それが通じる相手ではないことくらいわかってる。
なのに──
「──コード展開、確認。適合者反応、陽性。スキル転送開始」
頭の中に直接、女の声が響いた。
「え──?」
視界に、何かが浮かぶ。
それはウインドウのようなものだった。青白く光り、無数の英字と数値が並んでいる。
【スキル登録完了:《構造解析(デコード)》】
【対象物:ゼロスペシーズ種体E・構造パターン認識中】
【初期オーバーライド許可:発動】
「ま、まって……俺、こんなの知らな──」
脳内に、光が走った。
次の瞬間、俺の目には“世界の構造”が見え始めていた。
ゼロスペシーズの体表。
それが、“数式”に見えた。
肌のような構造、骨格のような演算式、行動パターンのアルゴリズム。
──これなら、勝てる。
どこかで、そう思っていた。自分でも信じられないけど、確かに“わかった”のだ。
「────分解、開始」
口が勝手に動いていた。
右手をかざす。そこに浮かぶのは、オレンジ色の回転式立体魔法陣──いや、“データ構造式”。
それが、ゼロスペシーズの身体を“掻き消す”ように貫いた。
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