第2話 謎の美少女

その日は、学園のカフェテリアで昼休みを過ごしているレンが、ふと目を引く人物に気づいた時から始まる。


レンは、友達と話しながら食事をしていたが、何気なく視線を向けた先に、ひとりの少女が座っているのを見つけた。

その少女は、ほかの学生たちと少しだけ異なる雰囲気を持っていた。

白い制服のリボンが少し乱れ、髪が少し長めで、その中に何か冷徹で強いオーラを感じさせる。その目はどこか鋭く、誰とも目を合わせようとしない様子だった。


レンはその少女が気になり、友達と話すのをやめて、無意識に目を向けていた。

だが、彼女が自分を見ているわけでもなく、ただ静かに本を読んでいた。その姿勢に、どこか不思議な魅力を感じた。


「おい、レン、何見てんだ?」

友達の一人がレンをからかうように声をかけてきたが、レンはその質問に答えることなく、再び目をそらした。


「いや、なんでもない。ちょっと気になる子がいたから」


友達は冗談交じりに笑ったが、レンの心はすでにその少女に引き寄せられていた。


その日の放課後、レンが教室を出ると、いつも通りの道を歩いているとき、突如としてその少女と再び出会った。

彼女が通り過ぎようとした瞬間、レンが少し気を使って話しかける。


「お疲れ、君も帰るのか?」


彼女は一瞬、レンを見たが、目をそらしてすぐに歩き出した。

その姿勢に少しだけ驚いたレンは、彼女の後を追いかける形で再度声をかける。


「ちょっと待ってくれ。あんまり一人で帰るのも危ないだろう?」


その言葉に、彼女は歩みを止め、まるで一瞬考えるように立ち止まった。

レンはその沈黙に少し戸惑い、再度声をかける。


「別に、余計なお世話かもしれないけど、心配でな」


「心配?」

彼女はようやくレンを見た。

その目は冷たく、厳しいがどこか真剣な表情をしていた。「あなたは他人の心配なんてしなくていい」


その一言に、レンは少し驚いた。しかし、すぐにそれを意気地なく受け入れ、にやりと笑って言った。


「まあ、そうだな。でも、俺は君が危なっかしいからさ。勝手に心配してもいいだろ?」


彼女は少し眉をひそめ、再び無言で歩き始めた。

レンはその背中を見送ることなく、ふと近づき、ついていった。


「名前、教えてくれよ」


その言葉に、彼女がちらりと振り返った。その目には一瞬、興味のようなものが感じられた。


「……アリス」


その名を聞いた瞬間、レンは不思議と安心した。

アリスという名前には、どこか力強さと同時に柔らかさが感じられるからだ。


「アリス、か。俺、レンだ。よろしくな」


アリスはその後、少しだけ歩みを止め、冷たく言い放った。

「あなたが私に声をかけた理由なんて、わからない。でも、今はその理由に答えるつもりはない」


レンはそれに答えることなく、ただ黙って歩き続けた。

だが、アリスの言葉には、何か引き寄せられるような不思議な力があった。


その日を境に、アリスとレンの関係は少しずつ変わり始めた。

最初はあまりにも無愛想だったアリスも、次第にレンに対して壁を少しだけ取り払い、二人の間に微かな信頼が生まれていく。

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