悪役令嬢(3歳)
じょーE06
第1話 勇者ピザ屋
高層マンションエントランス前に原付バイクが止まる。
インターホンで住人を呼ぶ。
「こんにちはー、ピザ屋です。」
『はーい』
インターホンの声と共に自動ドアが開いた。
エレベーターで55階へ向かう。
60階建ての高層マンション、55階より上は倉庫や電気水道の施設などがあり、事実上55階は最上階となる。
エレベーターが止まる。玄関はひとつしかなく、ワンフロア全てが1家族の階のようだ。
玄関のチャイムを鳴らす。
玄関を開けたのは老婆だった。インターホンの声は子供のようだったが…
「ピザを届けに来ました」
「あ、ご苦労さまね、待ってね、《タカシー、お友だちのピザ屋くん来たよー》」
奥に向かって声をあげる。
ピザ屋は友だちではないし、そもそもピザ屋という名前の人物などいない。
奥から黒いゴスロリ風の服を着た幼女がやってきた。
「ありがと」ピザを受け取ろうとする
「待って、今おばあちゃんがタカシって言ったけどお父さん?」ピザ屋が聞くと首を横に振る。
「パパの名前はタクヤ」なんじゃそりゃ、誰だよタカシって。ピザ屋は思った。
幼女は続けた
「パパもママもお仕事で今いないの。ピザ屋くん一緒にピザ食べよΨ( 'ч' ☆)」
「え、でも俺仕事中だし…」
「ピザ屋くん上がって孫の相手してやって」
おばあちゃんまでピザ屋は友だちと思ったか。
ピザ屋は店に電話を入れた。
今のところ次の配達注文も無いし、良いと連絡をもらい、ピザ屋はリビングにあがった。
テーブルにつき、幼女と対面する
「お姉ちゃん、幼稚園は?」
「リーはね、リーっていう名前なの。だからリーって呼んで✌️」
「そっか、で幼稚園は?」
「先生のナンチャラで今日おやすみ」
「あー、先生方の研究会という飲み会ね。わかる。」
ピザ屋はピザを1切れ手に取って口に入れた。
「ねえ、ピザ屋くん、幼稚園でね、怖い話があってね、」
「ふむふむ」
怖い話とは…そそられる
「人の骨がね、屋上で光ってるんだって」
いまいち話がわからないがピザ屋は尋ねた。
「どこで?」
「ここの屋上」
「それは不気味だね」
ピザ屋はそろそろ帰ろうかと立ち上がると
「でね、ピザ屋くん、骨を退治に行ってきて。」
どういうことだ、そもそもピザ屋はお化け退治ではない(`・ω・´)キリッ
「見に行こ!」
リーは玄関まで走り、リボンの付いたピンクのエナメルの靴を履いた。
「ピザ屋くん、早く!」
ピザ屋はスニーカーを履き、二人でエレベーターに乗った。
目指すは屋上。
屋上は誰も来るような場所ではないようで、太陽光パネルで埋め尽くされていた。
そこに、骨格標本のような全身骨のやつが居た!
クネクネと体が揺れている。
こちらには気づいてないようだ、しばらく様子を見る。
ひとしきりクネクネした後、しゃがみこんだ。
その足元にはタブレット。
「もしかして配信してる?」
ピザ屋はこれは襲ってくる可能性は低いとみて、話しかけることにした。
「もしもし、ピザ屋ですけど…」
骨格標本はビクッとしてこちらを振り向いた。
リーはピザ屋の後ろに隠れた。
「怖い(つд⊂)」リーは今にも泣きそうだ。
「あの、踊ってみたとか撮ってます?」
ピザ屋の問いに骨格標本は首を縦に振った。🙂↕️
「ニ○動?」
今度は横に振った🙂↔️
「Ti○Tok?」
激しく縦に振る🙂↕️🙂↕️
会話は成立するようだ。
説得を試みる。
「あの、近所で夜に光ってるって苦情があって、不気味なのでやめて貰えませんかって」
そこまで言うと骨格標本はうなだれた。
タブレットを手に取り、何かを打ち込んでいる。
画面を見せられた。
〔僕は自由に生きたい〕
筆談はできるようだ。つ○九郎かよ。
だいたい骨格標本は生きていると言えるのか。
「ちょっと気になったんだけどなんで夜に光るの?」
ピザ屋が聞く
〔高校の理科室の備品の蓄光塗料を塗った〕
カタカタと骨格標本の歯が鳴った😃
「高校に忍び込んだの?」
〔元々高校に居た 夏は暑いし冬は寒いので出てきた〕
つまり本当に学校の骨格標本のようだ。
骨の分際で暑い寒いとか贅沢な…
突然骨格標本の足元に水がかけられた!
ピザ屋が後ろを振り向くとリーはペットボトルを手にしている。
「( 'ω')エッ…」
「これおばあちゃんが神棚に置いていたお清めのお水(・▽・)」
すると骨格標本は力なく崩れ落ちる
「え!ホンモノ!?」
かくして骨人間退治は終結した。
タブレットに(県立○○高等学校)とネームが貼ってある。
「リーさんの家にダンボールとかあるかな?」
「あるよー。」
ダンボールにバラバラになった骨格標本を詰めてピザ屋バイクの荷台に入れた。
「じゃあ、おじゃましました( ^_^)/~~~」
ピザ屋は走り去っていった。
笑顔で手を振り続けるリー。
☆☆☆
「わざわざありがとうございます」
高校の事務員が対応に当たった。
ピザ屋は高校の教員玄関前にタブレットと骨格標本を届けに来た。
「あの踊ってみた配信好きだったのでちょっと残念ですね」
若い女性の事務員は微笑んだ。
知ってたんだ、というかその配信、有名なのか?
「実物見るとなかなか不気味ですけどね。」
「そうですね笑」
ピザ屋は届けものが済んだので足早に店に戻ることにする。
バイクのセルモーターを押し、走り去っていった。
to be continued
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