本作の作者様は一作毎に実験を試みます。失敗する恐れもある、この行為は冒険と呼ぶべきです。作者様は、血筋ではなく自らの勇気を支えにして。
本作は、数多くの模倣者を生んだループ展開に冒険を持ち込みます。先人が積み重ねた通りに、主人公達はループから抜け出せるのか。結末まで読み終えた後に、この問いは答えを出せるのか、読者が問われます。
作中に大量の歴史上の事実が挿入されます。人間の歴史は同じ旋律を編曲して繰り返すと語られます。過去は今なお過去になっていない、この矛盾に見えて現実を突きつけられます。
歴史は廻りますが、個人は直線と信じて生きて世を去ります。果たして、個人が歴史の円環を背負えるでしょうか。背負ってなお正気を保てるでしょうか。
円環は、廻ります。今なお、廻ります。歴史を通して進歩したと信じる私達は、今の世界を見て、本作を読んで、未だに円環の上を歩いていることを知ります。
早朝、悪夢に追われるように目を覚ました高校生・小坂悠希。
夢の余韻が冷めぬまま訪れたコンビニで、思いがけず再会したのは──かつて初恋を告白してフラれた、元同級生の少女・濱崎南。
「今日、何日?」
「え、8月13日だけど……」
違和感はそこから始まった。
テレビの占い、父親からのLINE、SNSの通知、友人からの誘い──
すべてが、夢で「見た」通りに展開していく。
まるで昨日の深夜に上映された「今日の映画」を、一足先に見終えてしまったかのように。
現実と記憶がかすかにズレて重なり始める奇妙な感覚。
これは「デジャヴ」なのか、それとも――「予知夢」なのか。
やがて、再び届いた南からのメッセージ。
【デジャヴって、感じたりしてない?】
次第に日常の輪郭が滲み始め、過去と未来のあいだで彼の日常は揺れ動いていく。
これは、夏の終わりに差し込んだ「もう一つの時間」をめぐる青春×予兆の物語。