何かと主人公っぽいやつが多いが多いこの世界

@rimuten0409

第1話


 とある高校最後の帰り道。俺こと神崎優衣は叫んだ。


「スゥーーーー自由だぁーー‼︎」


「うるせぇぞぉ‼︎」


「すんませーん!」


 流石に声が大きすぎたのか、近くの家からおじさんの声が聞こえてきた。流石に悪いのは俺なのですぐさま大きな声で謝罪を返す。


 これでよし!


「これで、これでやっと冒険者登録ができる‼︎」


 俺が通っていた高校、目黒区にある私立明星学園は在学中の冒険者登録が禁止されていた。


 しかし、そこも今日で卒業。これで俺も晴れて冒険者デビューだ!


「ふんふふ〜ん」


 思わず鼻歌が出てきてしまう。中学の頃の友達は登録が可能になる15歳からさっさと登録して冒険者ライフを満喫していた。


 中には才能があったのか、登録から3ヶ月でBランクまで、歴代最高記録で駆け上がっていったやつなんかもいた。


 今まで俺はそんな輝かしい生活をする奴らのことを指を咥えて見ることしかできなかった。


 だがしかし!そんな生活も今日でおさらば!ついでに仙川の方にアパートを借りたから一人暮らしの方もスタートできる!


 大学には行かないことにして、親には大学のために貯めていた分の貯金を生活資金にしてもらえるようになんとか交渉して、将来2倍にして返すと約束をつけてお金をもらうことに成功した!


 ふっふっふ。これで暫くはお金に困ることはない。これからどんどん成長して今まで俺に冒険者ライフを見せつけてきた(思い込み)奴らを見返してやるんだ!


「ただいま〜」


「おかえり、優衣」


 簡単に挨拶を済ませて俺は早速出かける準備をする。


「あれ、もう登録しに行くのかい...やっぱり、考え直した方がいいんじゃないかい?ほら、冒険者って死亡率が高いってよくテレビでも聞くし...」


「大丈夫だよ、お母さん!きっと成功してまたうちに帰ってくるから!」


「...約束よ?」


「もちろん!親不孝者になるつもりは毛頭ないからね」


「その返事が聞けてよかった。引き止めて悪かったね。行ってらっしゃい」


「行ってきます!」



「ついた!」


 今までテレビで見るか、前を通り過ぎるかしかできなかった仙川にあるこの建物、ギルドの前についた俺はついそう言ってしまった。


 少し周りの目が冷たいような...


 少し恥ずかしくなってきたので、そそくさと俺はギルドの中に入った。


 中に入ると、早速とても大きなホールが出迎えてくれた。


 そしてその奥にある受付にいた女性に声をかける。


「すいません、冒険者登録を行いたいんですけど」


「はい、冒険者登録ですね。必要な書類は持ってきていらっしゃいますか?」


「どうぞ」


「ありがとうございます。では、作業が終わるまでの間にこの紙にその他必要事項等を書き入れておいてください。こちらの札をお渡ししますので、作業が終わったらそこに書いてある番号で呼び出しを行いますので、お忘れ無く」


 そう言われて俺はホールにある椅子の一つに座った。


 番号は258番か。やばい、緊張してきた。今すぐこの場で叫び出したい衝動を必死に抑えて俺は紙を埋めていく。


〜10分後〜


『258番の方〜、258番の方〜。3番受付までお越しください』


 ついに呼ばれた俺は思わず返事をしそうになった口を慌てて抑え、なるべく違和感がないように受付へ向かった。


「それでは、ご記入が終わった書類をこちらに」


「わかりました」


「...はい、特に不備等はございませんので、また暫くお待ちください。そう時間はかかりませんので、ご安心ください」


 浮き足立っているのがバレたのか、そんな言葉をかけられる。少し恥ずかしくなって、頰をかく。


 そして受付の人が言っていたとうり、そう時間はかからずに再び俺の番号が呼ばれた。


「それでは作業が完了しましたので冒険者カードをお渡ししますね」


「ありがとうございます!」


 つい嬉しさが爆発して、声が大きくなってしまった。


 恥ずかしさに思わず赤面していると、受付の人に笑われてしまった。恥ずかしい...次からは気をつけよう。


「これで全ての作業は終了したので、これからはダンジョンに侵入しても大丈夫ですよ。ちなみに、これからダンジョンに突入する予定はおありで?」


「はい!早速近くの仙川第二ダンジョンに行こうかと思ってます」


「わかりました。ちなみに装備はどうされるので?」


「これから買いに行こうと考えているところです」


「なるほど、それならばこちらのチケットをお渡ししておきましょうか。これをここのギルドのショップで提出すると、お会計の際の料金が10%オフになるんです」


「そんなものをもらっていいんですか!?」


「はい。どちらにせよ、初登録の方には全員お渡ししておりますので」


「あ、そうなんですか...」


 なんだか俺だけ特別扱い⁉︎、みたいなことを一瞬でも考えてしまっていたこの頭をぶん殴りたい。


「お店はこの建物の3階にありますので、どうぞ行ってらっしゃいませ」


「ありがとうございました」


 そうして登録の終わった俺は早速受付の人に教えてもらった店へ向かうことにした。

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