第7話『開幕戦、火花散る!』
青空に、夏の太陽がぎらぎらと輝いていた。
蝉の声がうるさいくらい響く中、
――県予選、開幕戦の日が、ついにやってきた。
空(そら)たちは、会場となる総合運動場に到着した。
ピッチに広がる芝生の匂い。
白線でくっきりと区切られたコート。
観客席には、すでにたくさんの応援団が集まっている。
空の胸が、ドクンドクンとうるさく鳴った。
(……来たぞ)
「よっしゃあああああ!!!」
いきなり翔真が叫んだ。
「燃えてきたーーー!!!」
「バカうるせぇ!」と翼にどつかれながらも、翔真はニヤニヤしている。
その光景に、空も笑った。
(そうだ、俺たちは――)
昨日、泥だらけになってボールを追いかけた。
声を張り上げて、支え合った。
ようやく、"チーム"になった。
負けるわけにはいかない。
空は、仲間たちに声をかけた。
「いこう、みんな!」
「おう!!!」
◆
開幕戦の相手は、翠峰(すいほう)中学校。
堅実な守備を武器にする、県内屈指のディフェンシブチームだ。
空たちは円陣を組む。
「全員で、前へ!!」
「「「おう!!!」」」
キックオフのホイッスルが鳴った。
試合が、始まる――。
◆
序盤から、試合は激しかった。
「翔真、右!」
「翼、カバー!」
空の指示に応えながら、みんなで連動する。
パス、パス、ワンタッチで繋いで、前へ。
だが、翠峰の守備も堅い。
「くっ……!」
空がドリブルで切り裂こうとするが、相手DFに身体をぶつけられ、コースを消される。
前に進めない。
何度もトライするが、壁のようなディフェンスに跳ね返される。
(すげえ……)
空は心の中で唸った。
(こいつら、一人一人の寄せが速い……!)
だけど、負けない。
絶対に、抜ける。
◆
試合時間が進む中、少しずつ、空たちはチャンスを作り始めた。
翔真が中盤で身体を張り、ボールをキープ。
「翼、行け!!」
「任せろ!!」
翼が裏へ走り出す。
翔真のスルーパス。
それに翼がギリギリ追いつく!
ゴール前!
シュート体勢!
――だが。
ドガッ!
翠峰のディフェンダーが、体ごとぶつかってきた。
「っくそ……!」
翼がバランスを崩してシュートミス。
ボールはゴール横へ外れていった。
悔しそうに、翼が地面を叩く。
「ドンマイ、ドンマイ!」
空が駆け寄って声をかける。
「次、決めようぜ!」
「……ああ!」
立ち上がった翼の目が、ぎらぎらと燃えていた。
◆
そして、前半終了。
スコアは――0-0。
両チーム無得点のまま、ハーフタイムへ突入した。
◆
ハーフタイム、控えベンチ。
みんな、汗びっしょりになりながら、水をがぶ飲みしている。
そんな中、空が口を開いた。
「……なあ、もっとシンプルにいかねえか?」
翔真がタオルで顔を拭きながら振り向く。
「シンプル?」
空は言った。
「ドリブルで崩すんじゃなくて、ワンツーとか、フリックで一気に抜けよう」
悠人も頷いた。
「確かに。今のままだと、ドリブル突破、全部止められてる」
翼が拳を握る。
「やろう。みんなで、崩そう!」
全員の顔に、決意が宿る。
「後半、絶対、点取るぞ!」
「おう!!」
◆
そして、後半キックオフ。
空たちは、戦術を切り替えた。
スピードを活かした、ショートパス&ワンツー。
「翔真、リターン!」
「ナイス!」
空が翔真に預けて、すぐ前に走り込む。
翔真がダイレクトでボールを戻す。
そのまま空が受けて――
今度は翼にワンタッチパス!
翼が走る!
翠峰のDFが慌てて対応に来る!
しかし――
「今だ、翼!」
翼がすかさず、空に戻す!
空がフリー!
そして、ゴール前!
キーパーと一対一!
(決める!!)
空は身体を少し左に傾ける。
キーパーが釣られる!
空は冷静に、逆サイドへ――
ズバァアアアアアン!!
ネットが、大きく揺れた。
「うおおおおおお!!!!!」
ゴール!!!
ついに先制点!!!
仲間たちが、空に駆け寄り、抱きついた!
「やった、空!!」
「ナイスゴール!!」
空は笑った。
心の底から、笑った。
(これが……)
(みんなで取った、ゴールだ!!)
◆
残り時間も、全員で走り抜いた。
泥だらけになりながら、全力で守りきった。
そして――
試合終了のホイッスルが、グラウンドに響いた。
1-0。
空たちは、開幕戦、勝利をつかんだ。
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