『青嵐のフィールド』

優貴

『プロローグ』



 風が、青い。

 電車の窓から見えるのは、海と山に挟まれた小さな町。都会の騒がしさとは無縁の、のんびりした空気が流れている。

 そんな景色を、風間空はどこか冷めた目で見つめていた。


 耳元のイヤホンからは、ドリブル音と観客の歓声をミックスしたようなエレクトロのBGM。

 かつての彼は、その歓声の中心にいた。だが今は、誰にも気づかれず、静かに新しい高校へ向かっている。


「……くだらねえな」


 ポツリと、口をついて出た言葉。自分自身に向けたものだった。

 もうサッカーは、過去の話――そう思っていた。

 だが、この町での出会いが、彼の人生を大きく揺るがすことになるとは、まだ誰も知らなかった。

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