手違いでvrのゲームの世界に転生させられた俺、とりあえずのんびりしたいので新しい体で天下統一を目指します

しずはた

第1話 目覚め

 ぴよよよよ。小鳥の声で目が覚める。目には広い青い空が映っていた。


「...は?」


 とりあえず目をこすってみる。


 確か俺は...何してたんだっけ?


 やっぱり景色は変わらない。


 なんとか体を起こし、あたりを見渡してみる。目の前には見慣れない風景が広がっていた。


 倒れているビル、生い茂っている植物たち。そして、水たまりに映る美少女。


「どこだここ、そして誰だよ」


 そして、ここで俺の声の異変に気が付く。


「俺の声ってこんな高かったっけ...。」

 

 明らかに違う。


 その前に水面に映る美少女は誰だ。


 もう一度水面をのぞき込む。

 

 雪のように真っ白で肩までかかっている髪、整っていて凛とした顔、人並みにはある胸。そして、俺が着るはずもない女性用のかわいらし気な服。


 信じられなくて顔を触ってみた。明らかに俺の顔ではない。


 じゃあやっぱり水面に映ってるのって...。


 どれだけ水面を見てもその美少女の顔が出てくる。やっぱり認めるしかない、この美少女は俺だ。


「じゃあ俺じゃなくて私か。」


 いやのんきに考えてる場合か!


 そうして一人で騒いでいると、バンバンという大きな音がした。


「うぉ、なんだなんだ?。」


 その後もなんどもその音が鳴り、数秒後にぴたりと音が止まった。


 いきなりのことでびっくりしたが冷静に考えてみる。


 この音は明らかに自然の音じゃない。


 もしかしたら誰かいるのかもしれない。


「ここで待ってても何もないと思うし、向かってみるか」。


 そして俺は、音のなった方向へ向かってみることにした。

 

 倒れているビルの横を通り、水をこえ、音のなるほうへ進んでいく。











**************************************









 倒れたビルの物陰から音のなっていたところを見てみた。


 そして、目に映っていたのは、複数の死体とそれを見て叫んでいる男だった。

 

 人がいることに安心したと同時に、死体の見た目と悪臭で気持ち悪さが押し上げてきた。


「なんで死体なんかあるんだ...」


 映画で見たような死体よりももっとリアルで、においがする。

 

 嗅いだこともない死体のにおいで吐きそうになった。


 なんでこんなところに俺はいるんだよ!


 とりあえずその人に話しかけてみよう。何かわかるかもしれない。話しかけようと思ったがなぜかその男に話すことを躊躇してしまった。


 話しかけるのが怖い...本能がそう言っていた。


 そんなことしてても結果は変わるまいと俺はなんとかその気持ちを押し込み、勇気を振り絞ってその男に話しかけてみた。


「あ、あの...すみません」。


 その男は叫ぶのをやめ、こちらを向いた。急に男はにやりと笑ったかと思えば、俺との距離を一気に詰め、目の前に現れた。そして、俺の首をつかみ床に抑え付けた。


 俺は、じたばたと手を動かし、何とか腕を放そうとする。


 だが、そうするたびに男の手の力が強くなっていく。


「…ッぐッ、う…、ッくッ…」


 息ができない。


 あぁ、ここで死ぬんだな。


 どこかもわからないところで目覚めて、死ぬんだ。


 俺の人生こんなところで終わるんだな。


 男が何か喋っていたようだが聞こえない。


 意識が遠のき、視界が真っ暗になった。

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