再生不可能

チキンマン

1僕は勇者

この世界には、かつて魔王がいた。

魔王は邪悪で、世界を支配しようと企んでいた。

彼らは、まさに悪そのものだった。


だが——勇者様のおかげで、この世界は救われた。

魔法、武術、知識、戦術——思いつく限りのすべてを駆使して、勇者様は見窄らしい魔王たちを打ち倒したのだ。

伝説の剣、伝説の防具を身につけた、正義のヒーロー。

それが勇者様。

彼は何百年にもわたり、語り継がれ、称えられてきた。


そしてその間に、技術も進歩し続けた。

今、私たちが暮らすのはそんな平和な世界——

……と言いたいところだけど、実のところ、まだ“ちょっとした悪”は残っている。


そいつらを懲らしめるのが、僕の役目だ。

僕は勇者様の後継者。仲間とパーティーを組んで、街の平和を守っている。

勇者様ほどではないけど、結構強いんだぞ、僕ら。


──今日もモンスター討伐に出かける。


僕は支度を整え、仲間を集めて、モンスターがよく出る“危険エリア”へと足を運んだ。

……危険って言っても、モンスターたちはかなり弱いんだけどね。


数時間ほど、俺らは戦い続けた。

スライムが、じっとこっちを見ている。

僕は剣を構え、そのスライムに向けて振りかざした。


スライムは、それでもじっとこちらを見続けている。

僕はいつも通り、綺麗な剣さばきでスパッと半分に切ってみせた。


「疲れたー!まじで今日、モンスター多すぎじゃない!?」


ヒーラーのナルディアが文句を言い始める。こいつ、まあまあわがままなんだよな。


「うるせえよ、ナルディア。お前、ほとんど後ろにいるだけだろ? 肉体労働してねえくせに文句言うなって」


そう言って乗っかるのは、魔法使いのガーフ。

お前がそれ言うのかよ……どの口が言うんだ。


「は!? あんたこそ魔法使いでしょ!? 人のこと言えないでしょ!!」


喧嘩が始まった。

普段は仲良いのに、二人ともすぐ感情が昂るんだよな。

手が出ることもよくある。

そのうちこいつら二人で魔法の撃ち合いになるだろうな。


まあ、でもそのうち落ち着くだろう。


それよりも、討伐数はもう50体くらい。そろそろ帰るか。

僕は思い剣を振り下ろして、背中に戻した。

喧嘩してる二人を横目に、僕と残りの戦士、それと盗賊で帰り支度を始める。


ここから家までは、結構遠いんだよな……もっと近ければいいのに。

そんなことを思いながら、僕らは村へと歩いて帰った。


村に着くと、それぞれの家に戻り、晩ごはんを食べて寝る。

そんな日々を、もう何十年も繰り返してきた。


……普通に、平和に暮らしている。

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