メガネ、ヘンテコ異世界転移記

佳鳥/setsuka

陽主編

※メガネはあまり作品に関係しません


里家琳菜、20歳。

青い青春時代を過ごした訳でも大学ウェーイ✌️する訳でもなければなんか入社したら男女誑かした末社長になっちゃった〜なんてこともなく、なかったからか


異世界転移を果たした。















「おっ起きたか」



その瞬間、死ぬかと思った。

刃物を向けられていたとかじゃなくて驚きで。

だって明らかに現代じゃないんだもん。衣類が。起きたら知らないところだったら驚くでしょ。

……あっそういえばこんなこともある。

朝起きたら知らない景色、かと思いきやそういや旅行に来てたんだったみたいなこと。

寝転がって、死にそうになりながら、記憶を手繰る。


昨日…、あっだめだ夜寝れなかったことしか思いつかない記憶力に問題があるなさては

ええーっと…けど、いつも通りの日常だったはずだぞ?

希望してた会社の面接に落ちたショックは…まだ残ってるな。

昨日変なモノ食べてない、親の作った料理はいつも通り美味しかった。だめだ埒が明かないかも。


…そっと起き上がってみる。

大丈夫ここには人がいる。

三人集まれば文殊の知恵、ならば二人では文殊様以下であれここを知れるだけの力はあると思う。


「起きたばかりですまない、君について教えて欲しい。」


…ん?

情報はこちらが得たいのですが?

いや、しかし神が我々に与えたのは耳や脳だけでない視界がある!

ということでこの世界を少し観察してみる。


…中国?

目の前にいるのは男性…細い目をしたその中国っぽい服を着ている青年である。


まあ喋らない限りおねえでないとは断言できない、さっきまではクールな口調だが親しくなると「あらあら〜」と言い出すかもしれない。

つまり勝手に性別恋愛対象を狭めてはいけないが何はともあれ体は男性である。

え?なんだって、この配慮いらない?


「困惑しているのはわかるが、こちらが先に説明をするか?」

「いえ、私についての説明ですか?」

自分についてならまあ赤子じゃあるまいし話せるさ、と意を込めて言葉を投げる。

声だけなのにこの世界に少し馴染んだ気持ちを感じながら。

「ああ、望んでいる。後にここについて詳しく話す」


会話、案外スムーズに続くな。もはや私が普通に知り合った人より幾分スムーズな会話かも。これはちょっとウソ。

「うん、わかった。私はさといえりん、ハタチ。うーんと…あっ二十歳はたち、わかる?」

「は?普通に分かるが…」


あれ、中国じゃないのか?

ん?いやいや馬鹿か馬鹿か!そもそもそんな訳がない、言語が通じている時点で中国でもなければ古き中国もないだろう。

けどバイリンガルならあり得る?

ふむ、そう仮定しよう。


言語…といえば少し、なにか、違和感がある気がする…ここの雰囲気に呑まれているのだろうか。さっきから脳が馬鹿ですし。


「では、此方について話そう。」

「あっよろです」


「ここは…君にとって、異世界である。」





「………………」



ははーん。


もう喋らないでいいかもしれない。

そんな大事なものを私は軽く返事したっていうの。おふざけないで。

とかもうなんかもう本当ツッコミどころ満載なのだが…。

いや…大丈夫。私ならできるさ。

まあ学校ではちょっとしたトンチキメガネ枠でしかなかったがまあそれって恵まれている立場だろう…自分語りなど私がするものでない。よそう。

少し、少し整理する。

ごたごたと馬鹿かもしれぬ脳を動かしてみる。


「…説明は上手でないのだが。


なっ。ならば、俺様の話をしよう。私の名前はサン。ここについては学べばいい。

しかしまだまだ話さねばならぬことが多い…どうして儀式などしたのだろう。いや俺様の家に当たらねば…」


いっそ…


「何歳ですか?」


「ん?」


素朴な質問だったんだけど!

私は年齢言ったからなんとなく、考えをまとめてる間の一手間として聞いちゃっただけなのに!


「23年生きているが…少々差があるようだな。」


ふーん、3歳差。

些細だ。


いや、年の差がではない。

今私に起こりえ続けた全てと比べ、些細である。

んー…俺様っつった?23年生きて?そういう世界なのか?その後私とも言った…というと一人称の概念はうちの国と同一?似通っている?俺様ってなによ?

「なっならば」も気になるが。なっは、「なっ」はそれ助走なの戸惑いなの閃きなの?


いや結構どうでもよくて。


異世界転生って中華なんだ??なんで君、お前…貴様は異世界転生のこと知ってるの?えっこの場合は転移だって?

おい待てここで暮らさせるつもりか??!


「すまない。困惑させ続けたようだ。儀式…催しについて説明させていただく。


これは異世界の者を召喚する魔術によるもの…元は禁忌だった。

異世界の存在を確認した有名な魔術師ヤウトーがいたのだが…、異世界の者を召喚する大魔術を創り出した時、色々あり法はそれを封じたのだ」「ヤウトーがその者を元の世界に戻す魔術まで作ろうとしたとき、魔術師として優れたヤウトーを恐れたある魔術師がヤウトーを殺害し、ヤウトーという稀代の魔術師は亡くなった。

ヤウトーは戦闘諸々優れていなかったそうでな。防御魔術さえ疎かだったという。

これは、1000年程前の出来事だ。現在魔術自体習得する者は少ないのだが…

魔術をコピーする魔術が作られたのだ」

「…それ。」

「ああ、あの大魔術が使える。ヤウトーにとっても素晴らしい魔法だったのだろう、きっちりと魔導書レシピに記されていたのだ。

しかし、返還の術は複製できない。

なんせ書いてないからな。

この世界に生涯いさせる?

それは……故郷が恋しいかもしれない、だからヤウトーは元の世界に帰す魔法を創ろうとしたのだ。

我らが踏み込んではならないし使ってはならない。

そうして法で封じられた……のが50年前。

誰も破らないつもりだった。禁忌とは面白い物だがそもそもヤウトーの魔導書レシピなど貴重な物手に入らない。

そうして50年は破られなかったそうだ。」

「つい2年前新しく王となったエラン様は、少し自由奔放な人だった。

…故にか、ヤウトーのレシピを手に入れるとこう口走った。

『異界人を召喚させよ。』」


黒幕、発覚いたす。


「勿論止めた。全員が慌てて止めた。

しかし、『我らの技術は長らく進んでいない。私はそう推論する。

恐れるのはわかる。しかしこれはただ禁忌に触れたいからではない、発展を望む王心おうごころである。

何事にも進む代わりに失わねばならぬ、よってヤウトーの黒魔術を開放せよ。

そして準備ができた頃催しをしようではないか。

異界人を迎える、な。』」


…ああ、やってくれた。


「施されたのは翻訳の術、連なり翻訳補正、召喚時の安全保護、伴い儀式及び催し、そして返還の術や位置指定人物指定等はヤウトーのレシピに記されていない為できない。

…あのような大魔術師が今後来るであろうか。待ち侘びてはいけない、この術を使わなければいけない。

『私は王だぞ』、と口走るのがエランだな」


翻訳の術…なるほど。この言葉の違和感は翻訳がされてたからかな。

まだまだ言いたいことはあるが。

このトンチキメガネ、一度は落ち着いてみようじゃないか。


「この後俺様は催し内に行き報告せねば。

一切興味がなかったのだが…仕方あるまい。」

この人も可哀想だ、突然人が来るとか私はかなり嫌だ。

「君も共に来てくれ。」

「えっ、ああそっか…」

ということは…ここに来てから初めての外……

い、戦まみれってことは無いだろう。大丈夫、きっとここってパラレルワールドみたいなものだろ、異世界だけど。怖くない。

ない、はず。


「……あっ、そういえば、一人暮らしなんですか?」

「ああ。この俺様が実家で暮らし続けてはならんからな」

「いや、知らんけど。その口ぶり、自分に自信あるんですか?」


っと、長めの廊下を歩いていると玄関につく。

…もうすぐ外だ。

恐らく私がいた世界とそこまで差異はない、のかも。

「まあな。俺様は王になりたいからな。そしてなる」

あっ、ずっと思ってたけどこの人変な人だー

と感じると共に外を迎え入れる。





やっぱり、中国っぽい?

あっ猫ちゃんもいる。

猫…ん?胴体があるな?

いや猫に胴体はあります。けどなんか人の胴体してません?人の胴体なのに顔猫なの?



「…獣人?」


「ああ、そうだな。…獣人を知っているか?」

「知りません知りません。可愛いとは思いますけど動物」

「あそこの医者は熊の奥さんとご結婚なされた。珍しい異種族婚というやつだ」

「あっ知りま…へえ!そうなんですね!!」

なるほど、なけなしの異世界要素というわけか?

そうか、獣人…和らいだかと思った緊張が騒がしくなってきた。まあそういうのも楽しそうですけど。

催し、そうだ催しだった。どこか皆驚きのようなワクワクのような未知を備える様子に見える。


「ああ。リンナ、目立ちたいか?」

「あっいえいえいえいえ。一応積極的な方ではないので、安らぎも大事というもので。」

「そうだな、ではその眼に着用している品は取れるものか?」


…メガネのことか。

確かに周りを見渡せどもメガネをしている人はいない。この世界にはないのか。

ああ、確かに猫さんが私のことをまんまるーい目でみている。というかメガネのことを。


「大丈夫ですよ、本体じゃあるまいし。」

「ほん…本体?君の世界には本体があるのか?あ、ああ。預かろう」


「メガネっていうんです。私目が見えなくてですね」

そっと俺様さんことサンさんにメガネを引き渡す。

すると目を仰々しくカッぴらいて、何かと思えば

「目が見えなかったのか!?

すまない配慮が届いていなかった。是非私の手を」

「いやいやちがくて!これは私が悪いです…目は見えるんですけど視力が弱いんです。」

「すまないミ(め)ガヌエ(ね)は返すしやはり俺様の手を取るべき」

「全てご遠慮致します。メガネ持っていて大丈夫ですから。」

「…見えにくいんだろう?この世界にもこのような物はある。取りにゆくか?」

「ぼやけていけども道はわかります、まだ視力良い方なんですよ」

「そう、そうか。ならば信じよう。」

ちゃ〜んとメガネを預かってもらった後、ようやく不思議な空間が見えていることに気づく。


「あれが…」

「儀式というか祭りというか、まああれだ」

「なるほど!アレですね!」

催しだとか聞いたのでもうちょっと賑やかなのを想像したが、いやされど儀式、そんな訳がないか。

老若男女獣構わず切羽詰まった表情をする人々。申し訳ばかりのお菓子が並んだ屋台も哀しそうな顔をしている。

帰りたくなっちゃうじゃん。

…確かに魔法陣があるな。ウワーカッコイイー。

でも魔法陣ってこんな魔法陣顔してるんだ、やはり異世界なの?


何とか言ってると受付のような人がそそくさとこちらに来て「どちら様でしょうか」と声をかけられる。

「こちらは、異世界から来た者である」

「!」

騒ぐ素振りを見せた受付さんが実際声を発す前に、一人の男性が大きな声で

「今…異世界から来たと言ったか!?」

などと民衆が騒ぎ始める中、禍々しくこちらに近づく者がいた。


「ようやくか。貴方がこことは違う世界から来た者でよろしいか?」

従者を引っ提げた低い声で語らう

「そう…ですけどお偉いではないし産まれた国とてそう豪華なものでは…いや良い国ですが。」

「良い。否定してしもうたら私の名声が地に落ちるぞ」

この方は―――犬だ。渋めの犬だ。

お高そうな服を身に纏ったワンさんだがもしやこのいぬ

「この方はエラン様だ。」


「おう、申し忘れていた。私はエラン。この国の王である!」

やっぱり。やはり。


犬といえども忘れられぬよ。家に返してほしい!とかは話を理解してるからまだ言わないけど。

「俺さ…私の名前はサンにございます。早速ですがこのままお引き取りということで宜しいでしょうか?」

「サン…知っておるぞ。迷惑をかけたな」

いい人なのかなこのドックヘッドさんも。いやまぁ返せとは思うよ今も変わらずね。

というかそうか引き取りになるのか。

「いや。選びたまえ異界人よ。

このままサンの家におるか、宮殿をくれてやる、そこに住むか。」

宮殿か……いい響き。

けれどもう目まぐるしすぎて胃もたれ感もありつつ。

お硬いのだろうか。そこならばこの世に慣れるだろうか。

サンさんも面白そうな人だ…けれど確実に面倒をかけるだろう。どうしたものか。


「しかし、」

サンさんが口を開く。宮殿に行けって話?

うちに居座るなっていう?


「せっかく珍しい人間に触れ合えたのだ。別れてしまうのも名残惜しいな。」


まあまず珍しい人間ではないんですけど。そっちからしてもね。



「ふむ、良いじゃないか!

サンの家に住む場合、こちらもサポートはする。宮殿は恐らく何もないと思うぞ。

こやつなら大丈夫だと思うが同居人が危害を与えないようこちらの護衛の札を与える」


「んっ、ああ、じゃあそれでー…」

押しに弱めの私はなんだかんだ承諾してしまい、くそ。



拝啓遠い場所にいるお母さんお父さん、私、男性と一つ屋根の下で暮らすことになりました―――





「こちらとは文通でやり取りするよう。

どうか少しでも技術の進歩に協力してほしい」


今日のおさらいをしたエランさんとお別れし、帰り道を共に暮らすことになったサンさんと歩む。


「あの、」


「どうした、不満か?」



「………ぬいぐるみって、あります?」































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