エッセイ集
たんぽぽん
抹茶ラテを飲んだ日
僕は抹茶が苦手だった。
でもそれは過去のこと。
今の僕なら昔とは違って美味しく感じるんじゃないか、なんて甘いことを考えていた。
そんな僕はある日気づいたら抹茶ラテを手に取っていた。
残念ながら正統派の抹茶は見つからなかった。
ただ、見つけられなかっただけなのか、それとも本当になかったのかはわからない。
そんなことを考えながら家に帰った。
今夜にでも飲んでみようかな、そんなことを考えながら抹茶ラテを机の上に置いておいた。
それから何日たっただろうか。
あれから机の上の抹茶ラテをみるたびに今日飲もうかな、なんてことを考え続けてきた。
最近、これまで貯めてきたアニメを消化しようか、と考えてテレビの電源をいれた。
貯まっていたアニメは2作品合計20話ちょっと、その全てが恋愛ものだった。
甘かった。
夜中に高笑いをあげたこともあった。
甘かった。
ふと机を見る。
いつものところに鎮座したまま放置された抹茶ラテ。
飲もうかな、なんて考えていたけど、本当は飲むのが怖かった。
最後に飲んだ抹茶の味は忘れてしまったが、苦手な味だったという記憶は鮮烈に刻みついている。
「飲んで美味しくなかったらどうしよう」、「正直一杯180mlは多い」、そんな思いが頭の中を駆け回った。
一度作ると捨てるのは勿体ないから全部飲むしかない。
そして、今日もテレビをつける。
録画リストを開く。
アニメを見ていく。
視界の中に抹茶ラテが入ってくる。
その存在感たるや、まるで真夏の夜のモスキート。
甘いなぁ…。
アニメはCMにはいった。
いつもならCMは飛ばすのだが、飛ばさずに見る。
そして、ストップボタンを押した。
抹茶ラテを持ち、下へ降りる。
コップを取り出し、抹茶ラテの粉末を入れ、湯を注ぐ。
時間が止まったかのような悠久のときを感じた。
スプーンで湯をかき混ぜ、粉末を溶かしていく。
自室へと戻った。
リモコンの再生ボタンを押す。
CMは終わり、再びアニメ本編が始まった。
テレビの中ではヒーローとヒロインが頬を上気させ見つめ合っている。
そんな様子を尻目に、コップに口をつけ、液体を嚥下する。
甘いなぁ…。
苦手なものはそう簡単に克服できるものではない。
でも、嫌いな味ではなかった。
そうして僕は、もう一度コップに口をつけた。
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