第一章 学園生活

第1話 転校生

 蒼槍久條は「暮夜くれよ」と呼ばれる場所を眺めていた。

 世界三大機関の中の一つである、名門「城楼じょうろう学園」の中の特別部隊、正式名称は城楼学園界獣殲滅部隊育成機関。「暮れ、夜出んとする界獣を。日、出までに滅殺せん」というものを目標として掲げており、暮れ初めの夜の行動を開始することから暮夜。暮夜部隊などと呼ばれる。


 暮夜に所属している人間はほとんどがこの学園の教師である。


 暮夜は界獣の殲滅を主要に行う学校の中でもエリート部隊なのだ。

 久條はそこを目指していた。在りし日に助けてもらったと同じ場所で任務を遂行するために。


 久條の所属は「陽天」……らしい。怪獣殲滅部隊の中でも、一番下の部類に入るのだそうだ。なにせ久條は転入生だ。詳しいことはわからない。事前の夜姫の説明である程度を把握でしているだけに過ぎない。


 ちなみに学園の殲滅部隊の強さを順に並べると、「陽天ようてん」「黄昏たそがれ」「黎明れいめい」「暮夜」となるのだそうだ。

 基本的に怪獣は夜の時間帯に活動が活発になる。

 久條の所属、陽天はその名の通り日が天に昇っている状態を指すのだ。怪獣が一番弱い時間帯だ。


 また怪獣の強さの順で言うと「脆虚ぜいきょ」「平庸へいよう」「逞靭ていじん」「極強ごくきょう」という順になる。だが極強と呼ばれる怪獣が城楼学園を襲うことは珍しい。

 ここ十年に一度あるかどうかぐらいの確率なのだ。


 だがこの城楼の暮夜部隊の中には百を超える年齢のものがほとんどだ。

 圧倒的な強さ故、死ぬことは滅多にないのだ。

 そんな事を言っても、久條は転入生なのだ。それも、夜姫の紹介付きの。

 久條は体を震わせながら、ドアの前に立つ。武者震いなんかではない。ただの恐怖だ。


 そもそも久條自身、界獣と関わりがない生活をしてきたため、界獣などと言われてもいまいちピンとこないのだ。

 なにかやってみたらわかるのだろうかと、思案しながらも久條は「入って来い」という教師の声を聞き、ドアを左に寄せ教室内に足を踏み込れる。

 確か教師の名前は「迅鎚じんつい 霹靂ひれき

 霹靂が自己紹介をしろ。というので、簡潔に自分の名前と、つい先程までただの一般人であったこと。


 要するにこの学園で言う推薦組であるということを述べ、一礼してから教師に言われるがままに指をさされた一角の席へ座る。

 久條は夜姫から貰い受けた学園の制服を身に纏っていた。不思議な高揚感が身を包んでいた。

 そんな事を考えながらも、霹靂が剣についての説明をしている。


 そもそも、剣と言われる武器は近距離と中距離に適した武器でありとあらゆる武器の中でも魔力を通しやすいことが特徴のものだ。

 霹靂の話すことを理解するに、ここでは界獣を斃すために武器に魔力を纏わせて戦闘するというものらしい。

 久條は更に教師の言葉に耳を傾ける。

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