愛を込めて、君のドラゴンより

楽奈 Lana

第1話. ドラゴンからの「こんにちは」


すべては一言の「こんにちは」から始まった。


短くて、あっさりしていて。

でも、なぜか特別な温かさを持っていた。


「こんにちは。」


絵文字も、派手な言葉もなかった。

ただ、そっとドアをノックするような、

優しい「こんにちは」。


そして私は思った。

「この’こんにちは’には、心がある。」



彼の名前はレイ。

写真には、少し照れたような笑顔と、

静かな湖のような瞳が写っていた。


彼は私よりずっと若かった。

でも、年齢差なんて、

この小さな「こんにちは」には関係なかった。

ただ二人の間に、

誰にも見えない小さな道ができた。



レイは慎重に言葉を選んでいた。

急がず、焦らず。

まるで、一つ一つの文字に、

小さな祈りを込めるみたいに。


「今日、どんな一日だった?」


私は画面を見つめながら、微笑んだ。

そこには、

ただの挨拶以上の何かがあったから。



何日かやりとりを続けたある夜、

彼はふいにこんなことを言った。


「たまに思うんだ。

自分は小さなドラゴンみたいだって。

暖房のそばで丸まってる、そんなドラゴン。」


私はすぐに答えた。


「それなら、話は早いね。

私、ドラゴンの飼い主の免許持ってるから。」


彼はハートの絵文字を三つ送ってきた。

そして私は、

気づかないうちに心のどこかで、

彼の小さなドラゴンを大切にしたいと思い始めていた。



それから私たちの間には、

「ドラゴン」が生まれた。


レイが二日ほど返信をくれないと、

私はからかうように送った。


「ドラゴン、冬眠中?」


すると、彼は少し照れながら返してきた。


「ドラゴン、自己嫌悪のリハビリ中。」


画面の向こうで、

彼もきっと笑ってくれている。

そう思うだけで、胸がふわっと温かくなった。



レイは急がなかった。

押し付けもしなかった。

ただ、そっとそこにいてくれた。


彼の沈黙は、

どんな長い言葉よりも正直だった。



「君は、ちょっと変わってるね。」

レイはまた、そんな風に言った。


「ドラゴンの育成には、個性が大事だからね。」

私は冗談っぽく返した。


「もしドラゴンが暴れだしたら?」

彼が、ちょっと真剣な声で尋ねた。


「その時は、優しくなだめるよ。

大丈夫、ドラゴンも安心できるはず。」



二人の間には、

まだ名前もない小さな絆が生まれていた。


そして私は気づいた。

これは、計画でも、約束でもない。


これは、心がふわりと触れ合った瞬間だった。


🩷🩷🩷

この物語は、「こんにちは」から始まった小さな奇跡です。

読んでくださって、本当にありがとうございます。

あなたにも、優しいドラゴンが微笑みますように。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る