第31話 願ってもないデモンストレーション

 もしかしたらミーミルにはこの場の誰よりも強い魔法使いになれる素質があるのかもしれない。

 少なくとも魔法を駆使した戦いにおいて、有用な才能は強い優位性を誇るのだから。


「見た通りだ。個性にさえ添った形であれば、未経験者であろうともこれほどの力を発揮できる。もちろん、全てが貴様の采配だったという訳ではないがな」


「あ……そ、そうなんだ……」


「だが最後の一撃は紛れもなく貴様の力だよ、ミーミル」


「ッ!?」


 エルデの言う通りだ。

 最後の雷は、エルディオムでは放てない属性の壁がある。

 エルデの有していない属性が遠隔でここまでの力を発揮するなんてあり得ないからな。


 これがすなわち才能の力。

 魔龍王でもできないことが、ミーミルにはできるのだ。


「どうやら貴様には〝摩擦〟と〝抵抗〟の才があるらしい。なかなか珍しい属性だ、大切に育てるがいい」


「は、はい……」


 雷を操る力は強力な反面、使い手も少なく操作難易度も高い。

 習得する前にまず素質にすら気付けないことが多いからな。


 属性が何なのか、それさえ知らない人が多い世の中だから。


「な、なぁ、属性ってよぉ、炎とか水とかじゃねーの……?」


「はぁ~……どうやら貴様には基礎の基礎の基礎まで教えなければならぬようだなぁ~~~……」


「いぃぃ!?」


 しかし調子のよかったはずのエルデが、ボルクの一言で一気にトーンダウンしてしまった。

 今の一言でよほどがっかりしたらしい。


 そういった意味で魔法の素質が無さそうだなぁ、ボルク。


「炎や水、土や風などは所詮、人間が決めた理の価値に過ぎん。本質はそれぞれの価値を引き起こす〝現象〟の素質である。例えば私には〝熱〟の素質がある。この力は大気を熱して炎を呼び、冷やして水や氷を生むこともできるのだ」


「「「おお……」」」


「故に、間違った固定概念に縛られていては自身の素質に気付けず、ロクに魔法も使えないまま年老いて死ぬだけよ」


「うっへぇ、どぎつぅ!」


 口は悪いが、真理だな。

 かつての魔法使いの多くもその概念に騙され続けていた。

 現象の理由もわからなければ実力が伸びる訳もない。


 しかし幸い、世界が近代化して魔動具が一般的になり、その傍らで魔法の研究が魔学的に解明されて属性の正体が明らかになった。

 もっとも、そんな属性なんて知りたい人はもう魔動具技術者くらいだが。


 だからそんな属性の正体なんて知る人はよほどの魔法マニアか、感覚で理解した人くらい。

 それ故に魔法は一部の天才ばかりが注目を浴びる能力だったのだろうな。


「全員が今のようにできるとは限らん! だが感覚的に覚えることはできるだろう。もしそれを望むのであれば私についてくるがいい!」


「「「はいっ!!!!!」」」


 それでもって今度はエルデがその注目を浴びる対象になったと。

 よくもまぁここまで人心を動かせるものだ。さすが王というだけのことはある。


 これはなんだか俺の立場が怪しくなってきた気がするなぁ……。


「おいどけ! 邪魔だ!」

「な、なによ!?」

「うるせぇ、黙ってろ! ぶっ殺すぞ!」

「お、おい!?」


 ん? なんだ?

 道の方が何やら騒がしいな?


 むっ……妙な三人組が大人たちを押し除けてこっちにやってくるぞ?

 いずれもこの村では見ない顔だ。風貌からして冒険者か?


 しかも言動が物騒ときた。

 村の人たちにあんな口を叩くなど黙ってはいられないな。


 やむを得ず生地作りを中断し、外へ出る。

 エルデも気付いていたようで、不機嫌そうに顔を歪めていた。


「なんだ、あの馬鹿者どもは?」


「エルデ、君は授業の続きをしていてくれ。ここは俺がやっておくから」


「……わかった。煩いから早く済ませろ」


 言われなくてもそのつもりだが、相手がどう出るか。

 溜息を吐きつつ、こちらに向かってくる男たちと対峙する。


「お前がリアンとかいう元冒険者のジジィか?」


「ジジィ、と言うほどの歳じゃないが、元冒険者ではあるな」


「へへっ、ツイてるぜぇ! こんなヒョロい奴を殺すだけで大金がもらえるなんてよぉ!」


 俺を殺す? 大金?

 知らない内に俺への懸賞金がかかっていたのか?


 そういうのは大概ギルドや役人を通して全国に通知が出るはずなのだが。

 でも昨日仕入れに訪れた町ではそんなのは見かけなかったし、なんだろうな?


「俺の名はウーザス! いずれアサシンギルドにて名を轟かせる男よぉ!」


 中央の男が聞いてもいないのに名乗りを上げ、得意げに大刀を振り回す。

 どうやら彼が三人組のリーダー的存在らしい。


 それにしたって闇組織とも言えるアサシンギルドの名を出すとはまた物騒な。

 聞いて察するに、冒険者ギルドを退会させられるようなならず者たちかな?


 そう判断したので、容赦なく魔力の指弾を飛ばして彼の額を撃ってやった。


「うげっ!?」


「「ウ、ウーザスさーーーん!?」」


 なんだ、たった一撃で倒れてしまった?

 力量を見る挨拶程度の一発だったはずなのだが。


 下っ端の2人は狼狽えて戦いどころではなさそうだが、放っておくのも忍びない。

 それなので次は両手をはたき、二人の間に衝撃波を生じさせてやる。

 そうすると2人とも一挙に弾かれ、転がり、そのまま気絶してしまった。


「おぉもう終わったのか? 相変わらず貴様の〝衝撃〟は容赦無いな」


「これでも力を抑えた方さ。やり過ぎると中身ごと吹き飛びかねないからな」


 本来はもっと上手くやるが、今回ばかりは場が悪すぎだ。

 迷惑を被った人たちのためにも厳しく対処させてもらおう。


 ……そんな訳で授業は引き続きエルデに任せ、俺は失神した3人を頭だけ出した状態で雪に埋めてさしあげた。

 かなりがっちりに固めて埋めたからな、元冒険者と言えどそう簡単に出られはしまい。


 おかげでいい晒し者にできたようだ。

 ひとまずは皆が納得するまでこのままにしておくとしよう。

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