心と心を繋げるもの

誰かの心の中にほかの誰かのことがどんな形で存在しているかって、本当にぜんぜん分からないことだと思う。


ぼくはいまKくんともAさんとも仲がいいというわけじゃないけど、ぼくの心の中にはKくんが占める場所があったりAさんが占める場所があったりしてる。


でもこのことって、KくんもAさんも知らない。


ぼくはいつでも好きな人がいるっていう話を前にしたけど、でもぼくは一度も告白とかしたことないから、ぼくが好きだった人は誰も、ぼくにそんなこと思われていたっていうことをずっと知らないままだ。


この世界には、言われもしないし行動にあらわされることもないこと、ある人が心の中で思っているだけっていうことが、いくらでもある。そういうのは、そのままでいいものもあると思うけれど、心の外に出たがっているものもある。


ぼくの心の中にはたしかにそういうものがあって、それでついつい、誰にも望まれてないのに私小説みたいな小説を書いてしまってる。


そういう意味では、ぼくが小説を書くのって、友達がいないからじゃないかなって思う。友達がいたらわざわざ小説なんか書かなくても、ただ話を聞いてもらえたらそれでいいんじゃないのかな?


同じことの裏返しなんだけど、ぼくが本を読むのも、これもやっぱり友達がいないからなんだと思う。


人が自分の心の中のことをほかの人に話すのって、ある程度仲良くなってからのことで、つまり誰かにその人の心の中のことを話してもらおうと思ったら、まずその人と仲良くならないといけない。


ところがぼくは、人と仲良くなるっていうのがとっても下手で、友達がすごく少ない。


ぼくは人の心のことで何か知りたいって思っても、それを話して聞かせてくれる友達がいないから、その代わりに本を読んでるのかなって思う。


ぼくは本を読むのも文章を書くのも好きだから、友達がほとんどいなくてもけっこう平気に生きられているけど、それでもときどきは「自分はどうして友達を作れないのかな?」と思って、淋しくなるときもある。







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