AIによるファンタジー短編小説試作

ダイスケ

第1話 ファイヤーボール(AI小説)

 炎の裁き


 薄暗い森の奥、湿った土と腐臭が漂う洞窟の前に、冒険者一行は立っていた。リーダー格の戦士ガルドは巨大な両手剣を肩に担ぎ、斥候のエルフ盗賊シーリアは短弓を手に周囲を警戒している。聖職者のドワーフ、バルグリムは聖印を握りしめ、呪文の準備を整えていた。そして、いつも青白い顔で奇妙な香の匂いを漂わせる魔法使いの青年、ゼノンは、長いローブの袖を揺らし、杖を軽く地面に突いていた。

「この洞窟、ゴブリンの巣窟だな。斥候の情報だと、かなりの数らしいぞ」ガルドが低い声で言う。シーリアが頷き、鋭い目で洞窟の入り口を見つめる。「気配が濃い。簡単にはいかないわ」

 一行が慎重に進もうとしたその時、洞窟の奥から地響きのような音が響き、闇の中から無数のゴブリンが雪崩の如く飛び出してきた。緑色の肌に鋭い牙、錆びた短剣や棍棒を振り回す小柄な怪物たち。その数は数十を超え、冒険者たちを圧倒していた。しかも、群れの中にはホブゴブリン――人間よりも背が高く、筋肉質な体躯を持つ凶暴な個体――が数体混じっている。赤い目が爛々と輝き、棍棒を振り上げるその姿に、一行の顔は青ざめた。

「くそっ、多すぎる!」ガルドが剣を構え、咆哮する。シーリアは矢を放つが、ゴブリンの波に呑まれ効果は薄い。バルグリムが聖なる光を放ち、数体を怯ませるが、すぐに新たなゴブリンが押し寄せる。「こりゃまずいぞ!」ドワーフの声は焦りに震えた。

 ゴブリンの哄笑と金属の擦れる音が響く中、ゼノンが一歩前に出た。いつもは青白い顔に無表情を湛え、奇妙な香の匂いを漂わせる彼だが、今、その瞳には冷たい光が宿っている。ローブの裾が風になびき、杖を高く掲げる。彼の口から、古代語の呪文が滑らかに紡がれた。

「イグニス・スフェラ!」

 瞬間、ゼノンの杖の先から灼熱の光が生まれ、赤く輝く火球がゴブリンの群れへと放たれた。ファイアー・ボールは轟音とともに炸裂し、洞窟の入り口を炎の嵐で呑み込んだ。ゴブリンたちは悲鳴を上げ、炎に焼かれ、爆風に吹き飛ばされる。ホブゴブリンの一匹が棍棒を振り上げ抵抗しようとしたが、炎は容赦なくその肉を焦がし、骨まで焼き尽くした。数十体いたゴブリンの群れは一瞬で半数以上が灰と化し、残った者も恐怖に逃げ惑う。

 洞窟の入り口は黒焦げの残骸と煙に覆われ、生き残ったゴブリンの断末魔が遠く響く。一行は呆然とその光景を見つめ、ガルドがようやく口を開く。「ゼノン、てめえ…なんて力だ!」

 ゼノンは杖を下ろし、肩をすくめた。いつもなら「呪文は力ではない、知恵と技術だ」と説く彼だが、今は違った。「まあ、ときには力も必要だよ」と、かすかに笑みを浮かべる。その声には、普段の冷淡な口調とは異なる、どこか満足げな響きがあった。青白い顔に、炎の残光が一瞬だけ赤く映った。

 シーリアが息を吐き、弓を下ろす。「次はお前の香の匂いでゴブリンを追い払ってくれよ、ゼノン」彼女の軽口に、バルグリムが髭を揺らして笑う。「ハハ! あの匂いなら、死者だって逃げ出すぜ!」

 ゼノンは鼻を鳴らし、いつもの無表情に戻る。「冗談は後にしてくれ。まだ洞窟の奥が残ってる」彼の言葉に、一行は気を引き締め、焼け焦げた洞窟の入り口へと踏み出した。炎の余韻が漂う中、彼らの冒険はまだ始まったばかりだった。

(了)


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