恋風〜きみに恋した日 風は強く吹いていた
はお
プロローグ
初夏の日差しが競技場のピッチに降り注ぎ、芝生の緑を輝かせている。
まぶしくて、私は少し目を細めた。
全国高校総体サッカー、県大会決勝戦が始まる。組み合わせは、私立藤白学園対県立北山工業高校。
両チームの選手たちがベンチを出て、ピッチに散った。
藤白は校名の通りに藤色と白のユニフォーム。北工のユニフォームはオールブルー。
私はバックスタンドの藤白応援席に座って、北工の選手を見つめている。ボールを置いたセンターマークに立つ7番。
中学生のときよりも背が高くなっている気がした。体のラインも、私の記憶にある十五歳の少年とは違っている。
二年、経ったんだ。
息が詰まるように感じて、私は目を閉じた。
風がさあとスタンドを渡って、衣替えしたばかりの夏の制服のリボンがひるがえった。リボンの色は普通科を表す無地の紫紺。
あの日も風が強かった。かすかな胸の痛みと一緒に、閉じた瞳の奥に浮かぶ光景。ひとりの男子が、私の前に立って投げつけられたバッグを腕でふせいでいた。唇をきっと結んで。冬の空みたいな冴えたまなざしをして。
──中三の春の教室。窓の外は一面の桜吹雪だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます