寂しがり屋の神様
糸井 花
第1話
大きな大きな地球を創った神様は
きっととても寂しがりやだったんだ。
神様が最初に創った
小さな小さな生き物は
大きな海の水の中
よくよく覗き込んでも見えなくて
せっかく創った小さな生き物は見えなくて
神様はやっぱり寂しかった。
だから今度は大きな生き物を創ったの。
それはそれは大きな生き物
どしーん、どしーんと歩くその生き物は
空高くからでも見つけることができる
神様はやっと寂しくなくなった。
でもね、あれあれ
大きな生き物は、お腹が空いて仕方がないんだ
色んな食べ物を食べて
神様が創った地球は
めちゃくちゃになっちゃった。
どうしてだろう
ただ、寂しかっただけなのに
神様はポロポロ泣きだした。
えーんえーんと大きな声で泣き出すと
地球はあっという間に寒くなった
神様の涙が雪になって
神様の悲しい泣き声はとても冷たくて
だから地球は真っ白で寒い場所になったんだ
大きな生き物たちは食べ物が無くなって
とっても寒くて仕方がなくて
みーんなみーんな
いなくなっちゃった。
やっぱり神様は独りきり
とってもとっても寂しくて
ずーっとずーっと泣いていたよ。
神様はどれだけ泣いたのだろう
「ねぇ神様」
ある日突然、小さな声が聞こえたの。
神様がびっくりして顔をあげると
目の前には初めて創った小さな生き物がいた
「ねぇ神様、僕がいるから笑ってよ」
小さな小さな生き物はその日から
神様のそばにずっといた
小さな小さな生き物は
神様と毎日話をしたんだ
神様は少しずつ笑顔になった
神様が笑うたびに地球は少しずつ
暖かくなっていったんだ
「ねぇ神様、暖かいって気持ちがいいね。神様が笑ってくれるから、どんどん暖かくなっているよ」
神様は小さな小さな生き物と話すのが大好きだった。ある時
「あははっ」
と声をあげた。
そうしたら、ポポポンッと花が咲いた。
それから神様が笑うたびに
花が咲き、木が生えて、生き物が増えた。
「あははっ」
ポポポンッ
「あははっ」
ポポポンッ
地球はとっても賑やかになった
たくさんの生き物の中に
少しだけ、ほんの少しだけ
他の生き物よりも考える事ができる生き物がいた
それは、ヒトという生き物
ヒトを見ていると、とても面白かった
神様はヒトを見るのが楽しかった
ヒトは色んな事を考えて
色んな事を思いついて
色んな事をやってみて
地球には色んなものが増えた
たくさんの建物は
色んな色で綺麗だったし
とても早く走る車もできた
病気や怪我で苦しむヒトのために
それを治すことができるようにもなった
ヒトはたくさん考えて
いつでも食べ物があるように
暖かい場所で野菜を作ったり
他の生き物を育てたり
食べ物が他の生き物にとられないように
薬を撒いたりしたんだ
神様はヒトを見るのが楽しかった
ヒトはどんどんどんどん増えていった
たくさん食べて
たくさんの物を作って
たくさんの生き物がいなくなった
でも神様はヒトがいるから
寂しくなかった
ある時、神様が初めて創った
小さな小さな生き物が、神様に言ったの
「ねぇ神様、僕たちはもう生きられないよ」
気づいたら、神様が創った地球は
ボロボロだった
暖かくて気持ちが良かった空気は
暑すぎて、ヒトやいきものの目には見えない危ないものがたくさん浮いている
土には、たくさんの薬が染み込んでいた
花も木も、、、ヒト以外の生き物も
いつの間にかとてもとても少なくなっていた
神様はとてもびっくりした
楽しくて、面白くて、寂しくなかったのに
それなのに、、、
神様が創った地球は壊れてしまっていた
小さな小さな生き物は
小さな声で言った。
「ねぇ神様、泣いたらいけないよ。また地球が寒くなってしまう。そうしたら、みんないなくなってしまうよ」
神様は、小さな小さな生き物を優しく手に乗せて
じっと見つめた
「君が居てくれるなら、泣かないよ」
でもね、小さな小さな生き物は
今にも死んでしまいそうなんだ。
そうしたら神様は、泣いてしまうかもしれないんだ。
ーーーendーーー
寂しがり屋の神様 糸井 花 @HA-NA
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