第21話 作戦会議



 驚くべきことに、隼斗はゼルハム船長の元から無傷で生還した。それどころかなぜかとても気に入られたらしく、その噂は瞬く間に船内を駆け巡った。


 隼斗本人はというと、それから本船によく来ており乗組員たちとも打ち解けて、ジムでの筋トレや戦闘員との手合わせなど楽しそうにしている。

 レンジャー部隊にはまだ在籍しており、呼び出し、つまりバルバドス宇宙海賊団との戦闘があるたびに幹部たちと戦ってはその成長ぶりに驚かれている。

 もともと幹部の直部下である部隊長、その候補に上がるくらいの実力は持っていた。最近では確実に部隊長クラス、その中でも中位レベルになってきた。それも実力社会の海賊団ではかなり好意的に捉えられている。


 隼斗はフレンドリーに迎え入れられたことに最初はかなり面食らっていたようだった。今まで気のおける仲間や信頼できる周辺環境にいなかったせいもあるだろうが、ここではこれが普通だと説明すると笑顔をみせていた。

 

 海賊が信頼できるか、という問題は今は横に置いておく。


「………………」

「どうかしたか?」

「べつに」


 そして今日も隼斗は本船にいる。

 しかも、ここは船長室。船の中枢。もしも隼斗が工作員だったと思うとぞっとする。隼斗に限ってそれはないけれど。

 毎日ではないにしろ継続的に船に乗せるのだから、身辺調査は済んでいる。身の潔白は間違いない。間違いなさすぎて、調査を行った諜報部門が隼斗を引き入れたがっている。間者の才能があるとかなんとかで。


 シェリルは……まぁ、隼斗が楽しそうだから良しとしている。以前よりも頻繁に顔をあわせられるし。

 それでこのまま、いつか地球を離れる時に隼斗を連れ去ることができれば、なんて。実現は難しそうだと思っていた想像、隼斗が船内でコーヒーを淹れている未来。それがもしかしたら手に入るかもしれない。





「全員いるな」


 定刻。ゼルハム船長が椅子から立ち上がった。談笑していた者たちが話すのをやめ、船長に向き直る。

 室内には海賊団の四人の幹部。その直属の行動部隊長たち。情報や諜報、管制などの各部門長。そしてレンジャー部隊のグリーンレンジャー裏切り者


 これから、ドルネンファミリーとその寄生先であるレンジャー部隊への襲撃作戦の最終調整が行われる。

 ゼルハム船長の合図で、シェリルが口を開く。

 

「では作戦の順を追って確認していく。第一段階、情報部による敵組織本部へのサイバー攻撃。通信障害を起こして外部との連絡手段を遮断、特殊電磁波で建物外への転移を妨害」

「テスト済み、問題なし。我々も転移は不可能になるが、通信機は使用可能なことも確認済みだ」


 こういう時、場を仕切るのはたいていシェリルの役目だ。

 幹部の他の連中は口数が極端に多かったり、回りくどかったり、言葉が足りなすぎたりするため必然的にそうなった。

 

「次、第二段階。レンジャー部隊司令部を襲撃。ドバス班とシェリル班で行う。シェリル班問題なし、建物の内部構造も全員把握済み」

「ドバス班も問題ないぜ」


「次、第三段階。ザバシュ班が武器開発現場を襲撃。特殊武器密造で星間指名手配されているギオン・バーツの捕縛、証拠品押収」

「あ〜、ハヤトの持ってきた内部映像みたんだけどさぁ、ちょっと想定よりも武器庫がでかそうなんだよね〜。だから諜報部からちょっと人員補充したからね〜」

「相談を受けて、機動重視で人員を回しました。こちらは問題ありません」


 隼斗がまだレンジャー部隊に所属している理由はこの作戦のためだ。隼斗であればレンジャー部隊の本部、その内部の見取り図や詳細を簡単に手に入れられる。しかも、ポケットに入れた記憶媒体で録画した司令本部や武器庫、開発現場まで持ってきた。指名手配犯の発見にも繋がっている。

 各関係者へ自然な会話誘導で機密情報を聞き出していたりと、諜報部門が欲しがるのも納得する。本人はいろいろ吹っ切れたからと言っているが、それにしても。



 戦闘実行以外も確認、共有していく。

 作戦中、ドルネンファミリー幹部のリタ・ウォンカは同建物内で捕縛する。こちらは日本宇宙軍が「極秘会談」という名目で面会を取り付けているのでそちらに一任。

 目標であるドン・ドルネンは普段、組織本部ビルの最上階にいるらしい。緊急の転移装置が妨害されれば、屋上のハッチから小型宇宙船で脱出するだろう。そこをゼルハム船長とブジーが叩く。


「懸念事項は、この本部ビルの横に建設中の建物だけど」

「五年も前からずっと工事が終わっていないんだ。内部への立ち入りはできなかった」


 シェリルのあとを隼斗が補足する。

 レンジャー部隊に所属している隼斗でさえ詳細を教えてもらえない何か。高層ビルだが、用途が不明。聞き取り調査でも、末端はともかく中堅の関係者でも詳細を知らないらしい。


「怪しいよねぇ〜。大型の宇宙船とか〜?」

「それにしては縦に長すぎる。旧型のロケットというのならわかるが」

「対空ミサイルだったりしてな」

「それなら今回の作戦に特に支障はないからいいけど」


 諜報部門でも隼斗でも、日本宇宙軍でも情報を得られなかった。懸念事項は極力消しておきたかったが。


「分からねぇモンをここで言ってても仕方ねぇ。本船で監視、何か動きがあれば逐一報告。それしかねぇよ」

「了解しました」


 ゼルハム船長が立ち上がる。この件は情報部門が対応することで決まった。


「あとの処理はニホン宇宙軍がやってくれるらしい。恩を売っとくに越したことはねぇ、派手なことは極力控えろよ」


 ドバスが不満そうに唸るが黙殺された。

 これにて作戦会議は終了、あとは実行のみとなった。





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