第27話この箱からもあなたがこぼれる

「開けて開けて開けて! この“雑貨②”って箱、絶対やばい気がする!」


遥が叫ぶように言いながら箱を抱えてやってきた。


「名前からして雑なのに“②”って……“①”はどこ行った?」


「どこかで迷子になってるかも……開けるよ?」


ぱかっ。


「……なんで、栓抜きとスノードームと折れた鉛筆が一緒に入ってんの!?」


「うちの“日常トリオ”だよ」


「どこの日常だよ!!」


段ボール開封戦争、勃発。


「これは“書類”って書いてあるけど、中身は?」


「えーっと……昔の映画の半券と、駿くんの中学の通知表?」


「おい、誰がこんなもん保存してたの!? ……って俺か」


「“もう少し落ち着いて行動しましょう”って書いてある。変わってないね」


「先生見てるかな……」


ケタケタ笑いながら、箱の中身を仕分けていくふたり。


その途中、遥がふと立ち止まった。


「あ……これ」


手に取ったのは、小さな手紙の束。


「……なんだっけこれ?」


「たぶん……付き合ってた頃のやつ」


「うわ、恥ずかしい……読まないで!」


「読みたい! “駿くんへ、今日もかっこよかったね”とか?」


「やめてー! 未来の私が倒れるー!!」


笑い声がリビングに響く。


どの箱にも、思い出が詰まっていた。

どの箱にも、過去のふたりと、今のふたりがいた。


「……これ、全部整理し終わったらさ」


「うん?」


「新しい“思い出箱”作ろうよ。また、こんなふうに笑えるように」


「賛成。今度はちゃんとラベリングしてね」


「それは……努力目標で!」


箱をひとつひとつ開けるたびに、ふたりの距離はますます近づいていく。


ドタバタも、過去も、笑いも全部まとめて──

この部屋が、もうちゃんと“ふたりの家”になり始めていた。

 

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